(※画像はイメージです/PIXTA)

与党・自民党の情報通信戦略調査会は2023年8月23日、NHKのインターネット配信をスマホ等で視聴する人に対し、一定の負担を求めるべきだとする提言案をまとめました。そのような制度を導入する場合、法的観点からどのような問題が考えられるのか、弁護士・荒川香遥氏(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)に話を聞きました。

NHKに求められるもの

このように、最高裁は、NHKの受信料制度の正当化根拠は「公共性」「非営利性」「独立性」「公正性」にあるとしています。

 

しかし、それは、裏を返せば、もしNHKの「公共性」「非営利性」「独立性」「公正性」が損なわれたら、受信料制度(ネット視聴の費用負担をユーザーに求める制度)の正当性はたちまち失われてしまうということです。

 

たとえば、NHKが政権や特定の政党に忖度した報道をしたり、商業主義に走ったりすることは、許されません。そして、その危険性は完全には払拭できません。

 

ここで、先ほど、最高裁が、受信料制度の正当化根拠の一つとして挙げた理屈を思い出す必要があります。

 

受信料の金額については毎事業年度「国会の承認」を受けなければならず、受信契約の条項についても「総務大臣の認可」「電波監理審議会への諮問」を経なければならないなど、内容の適正性・公平性が担保されている、という理屈です。

 

「国会の承認」には、事実上、時の政権の意向が反映される可能性が完全には排除できません。議院内閣制のうえでは、たいていの場合、国会の多数派が内閣総理大臣を指名し、内閣総理大臣が組閣することになっているからです。

 

事実、2014年に当時のNHKの会長が「政府が『右』と言うものを『左』と言うわけにはいかない。政府とかけ離れたものであってはならない」と発言して物議を醸したことがあります。これは、最高裁判例の理屈からすればNHKの「公共性」「非営利性」「独立性」「公正性」に国民から疑念を持たれかねないものだったといえます。

 

今日では、多チャンネル化・IT化によってメディアの多様化が進んでいるうえ、誰でも情報を受発信でき、大量の情報が瞬時に広まるので、誤った情報・偏った情報が真実であるかのように広まってしまう危険性があります。

 

したがって、NHKは、公共放送局として、これまで以上に「公共性」「非営利性」「独立性」「公正性」を貫き、正確な情報・必要な情報を伝えることが要求されているといえます。ネット配信についてもネット視聴者に相応の費用負担を課すというのであれば、なおさらです。

 

 

荒川 香遥

弁護士法人ダーウィン法律事務所 共同代表

弁護士

 

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