「コアバリュー」を本気で使うと強力なカルチャーができる
篠原課長が退職した直後、他部門だけでなく、彼女が所属していた経理部のメンバーの多くも、篠原課長に対して、尊敬の念は抱きつつも、なんとなくストレスを感じていたことが判明しました。彼女がいるあいだは「仕事熱心だ」「人柄がよい」ということで、忖度や遠慮があり、覆い隠されていたのです。
後任として内部昇進した課長と、外部から招かれた経験豊富な部長の二人三脚で、以前よりも強力な経理部が形成されつつありました。新たな資金調達の話も、以前よりも格段にスムーズに進むようになりました。
また、全員が「コアバリュー」を自覚し体現する人になることで、経営チームは強化されました。率直に意見を言い合い、厳しく責任を問い合います。ときに激しく言い争う場面もありますが、結論には全員が「自分ごと」として従い、積極的に推進する健全なチームになりました。同じ価値観(コアバリュー)を共有する仲間としての信頼感が強まり、一緒に高い目標を目指すチームが生まれ変わったのです。
コアバリューを共有していない人がはっきりすると、その人は、コアバリューを体現するよう努力するか、離れていくかを選ぶことになります。最終的には、会社全体がコアバリューを体現する人だけの集団になり、強力なカルチャーを持った企業へと変貌しました。
コアバリューがカルチャーにまで昇華すると、カルチャーに共感する人が集まり、逆に合わない人は離れていきます。さらに、取引先や顧客も、そのカルチャーに共感してくれる企業が増えてくるでしょう。「強力なカルチャーを持つ会社」と聞いてあなたが思い浮かべるあの会社も、このようにしてカルチャーを育んできたはずです。
職場になじめない原因は「コアバリューの不一致」の可能性も
最後にお伝えしておきたいのは、コアバリューの策定によって篠原課長も救われた、ということです。仕事はできるのになぜか周囲となじめない、本人も居心地の悪さを感じているような場合、コアバリューが合っていない可能性が大きいのです。コアバリューが言語化されてはじめて、それに気づくことができます。
それまでは「なんとなく感じの悪い人」「空気の読めない人」などと陰でいわれるのみだったでしょう。しばらくしたらお互い後味悪く辞めていく…というのがよくあるパターンではないでしょうか。篠原課長は言語化されたコアバリューが「自分とは合わない」とはっきり認識できたため、自分に合った新しい会社を見つけることに成功したのです。
コアバリューが言語化され、適切に活用されると会社は強力なカルチャーを築くことができ、働く人は居心地が悪い原因が分かります。また、入社前にミスマッチを防ぐこともできるようになります。コアバリューによって会社、働く人の双方にいい変化を起こす企業が増えることを望みます。
久能 克也
株式会社オプティ 代表取締役
EOS JAPAN合同会社 代表