「人生の節目」のタイミングで老後についての話し合いを
これは、筆者が空き家の管理や空き家の有効活用、処分などについて受ける相談のなかでも、よくある事例の1つです。
「両親は元気だし、問題ない」と多くの人が考えていますが、「空き家問題」は突然やってくるものです。空き家問題は決して特別なものではなく、多くの人の身近にある、待ったなしの問題なのです。
では具体的に、「実家のあと片付け」はどのようにして行えばいいのでしょうか。
まず大切なことは、早い時期からご両親と親の老後について話をすることです。老後はどこで、どんな暮らしがしたいのかを聞き出すようにしてみましょう。
聞き出すタイミングは、親の定年の時期や友人の冠婚葬祭など、人生の節目が訪れたときです。
元気な親に対して老後の生活や相続の話を切り出しにくいのは事実ですが、老いが進めば、頑固になってしまって余計に話しづらくなるというのはよくあるケースです。
以下、親が元気なうちに話し合っておくべきこと、準備しておくべきことについて、5つのポイントを解説します。
1.終の棲家について
介護の要・不要によって、住まいの選択は大きく異なります。自宅に住み続けたい場合は、手すりの設置などのバリアフリーに対応したリフォーム工事を行うほか、場合によっては建て替えが必要になるかもしれません。家の階段の上り下りが大変だったり、自動車の運転が不安だったりする場合は街中のマンションに引越しするという選択肢もあるでしょう。また、介護が必要な場合は、施設探しを始めるべきといえます。
2.実家を維持したいのか売却したいのか
施設や病院に入ることになったとしても、「いつでも帰れる場所」があることは重要です。先祖代々の土地を守るなどの想いもありますし、親族としての故郷を保つことができるメリットも多いです。
空き家になった家を維持する費用や手間が掛かるというデメリットもありますが、子が将来的に仕事を辞めて老後は実家に帰ってゆっくりと生活する、経済的理由で行く場所がなくなった場合に実家に避難するといったことも想定できるため、「両親の住まい」という視点以外からも、実家の行く末について話し合っておく必要があります。
3.家に関する書類を揃える
家に関する書類の中で重要なものはいくつかありますが、「登記識別情報通知書(登記済権利証)」はもちろん、譲渡所得税の計算の際に必要になる実家を購入したときの「不動産売買契約書」と、諸費用の領収書がなによりも大切です。
4.「親と一緒に」要らないものを早めに処分をする
捨てることがもったいない気持ちは大切ですが、歳をとると億劫になり家の片付けができなくなってきます。子供時代の洋服やおもちゃ、お客様用の布団、古い雑誌などで収納がいっぱいになり、納戸が足の踏み場もない状態になっているケースは珍しくありません。
ただ、親の価値観を無視して「これはいらないでしょ!」と勝手に処分するのは控えましょう。ここで揉めると余計なトラブルに発展する可能性があります。
5.親の資産について把握しておく
親と一緒に要らないものを処分する一番の理由は、重要なものがどこにあるのかを整理して保管しておくためです。不動産関係の書類や預金通帳、有価証券、保険証券、貴金属などはしっかりと管理してください。
相続が発生した際に遺産がどれだけあるのか把握するためには、一緒に片付けをしながらでないと、本人も忘れている可能性があるからです。
話し合いは親が元気なうちに
ほかにも課題はたくさんありますが、まずは上記5つについて話をしてみましょう。
親が認知種を発症したり、突然相続が発生したりすると金融機関の口座などの資産は「凍結」され、すぐには動かせなくなります。
口座凍結となってしまえば、認知症になった親の病院代や生活費が引き出せず、介護期間が長期化するほど、肩代わりする子ども自身の生活が困窮することは明らかです。
相続が発生した場合も、遺産分割協議などすべての相続手続きを済ませて必要書類を提出しなければ、払い戻しはできません。
なにより親が元気なうちに、よく話し合って準備しておくことが大切です。