ビジネスパーソンのなかには、経営層へのキャリアアップを夢見ている人も多いはずです。しかしそれは、一朝一夕の努力で実現できることではなさそうです。本稿では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、企業人としてのトップキャリアである「CEO」になるには、どんな経験が必要なのかを解説します。
「CEO」へのキャリアアップをめざす人が〈挙手をしてでも〉経験しておくべきポストとは?【転職のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

CEOをめざすことは、COOをめざすこと

いうまでもなく、勤め人にとって最高峰のポストはCEO(Chief Executive Officer/最高経営責任者)およびその周辺の役職です。昨今は「CXO」と書き記し、このXという文字にOやF、HR、T、Iなどのイニシャルを当てはめて経営上重要なポストとして呼称するようになりました。

 

企業や業種業界の文化によって違いはありますが、CEO以外には次のような役職が挙げられます。

 

最高執行責任者 COO(Chief Operating Officer)
最高財務責任者 CFO(Chief Financial Officer)
最高人事責任者 CHRO(Chief Human Resource Officer)
最高技術責任者 CTO(Chief Technical Officer)
最高情報責任者 CIO(Chief Information Officer)

 

これらは代表的な役職のごく一例で、会社によってはさらに必要なポストがいろいろと用意されています。ビジネスパーソンのなかには、こうした専門的な役職をめざしている人が多いのではないでしょうか。

 

筆者がヘッドハンティングの世界からビジネスシーンを眺めたとき、「このポストを戦略的に経験している人は、目標に近い位置取りができ、逆にそのポストでの経験がないとチャンスを逸する結果になっている」という、傾向のようなものを感じることがあります。

 

会社の規模や業種業態によって役職の機能は千差万別であるというのが常識ですが、一般論として、自身のキャリアとしてCXOのような経営層をめざすにしても、凡人の一朝一夕の努力では手が届かないことは明白です。

 

そこでは、数十年単位の成功を実績として積み上げていくことが求められますから、少なくとも5年から10年単位で長期的かつ戦略的にキャリアを見据えた準備をしていくことが肝要です。

 

まずは、CEOをめざしてステップアップしていく際に、経験しておくべきポストについて考えましょう。

 

トップに君臨するCEOはまぎれもなく会社の最高経営責任者ですが、そのCEOのもとで腕を振るうのが最高執行責任者であるCOOです。

 

従来の経営学でいえば、経営は「所有」と「執行および監視」がコーポレートガバナンス上で分離しています。取締役会を主宰し実質的に最高意思決定者となるのがCEO、そして日常のオペレーション業務を執行する最高位の存在がCOOになります。

 

この両者の緊張関係で役割を分け合うのが望ましいとされています。

 

1人が双方を兼務しているケースもあり一概にはいえませんが、経営理論上は分離しているほうが正しい姿です。そしてCEOに就任する人は、直前にCOOを経験していることが常識になってきました。COOを経験してCEOに到達した人物は、「まぎれもなく」見識を備えた社長ということになるわけです。

 

言葉を換えれば、CEOをめざすということは、COOをめざすことだといっても過言ではありません。