ビジネスパーソンのなかには、経営層へのキャリアアップを夢見ている人も多いはずです。しかしそれは、一朝一夕の努力で実現できることではなさそうです。本稿では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、企業人としてのトップキャリアである「CEO」になるには、どんな経験が必要なのかを解説します。
「CEO」へのキャリアアップをめざす人が〈挙手をしてでも〉経験しておくべきポストとは?【転職のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

COOになるために必要なこと

ではCOOになるにはなにが必要なのでしょうか。

 

具体的にいうと、CFOとCHROを40歳代から50歳代前半までに経験しておくと望ましいという見解が、グローバルスタンダードになってきています。筆者が日々接触する監査等委員会設置企業のなかの指名委員会との協議においても、こうした意見を聞くことが増えてきました。ではその中身を具体的に見てみましょう。

 

もともと日本の経営層は計数(数字)に弱いと、グローバルでは厳しく指摘されてきました。

 

取締役会、役員会を構成する最高意思決定機関のメンバーであっても、会社の具体的な経営状況を数値化して分析する能力がありません。経理や財務に置き換えられる会社の数字の流れに関して専門的なトレーニングをしていないこともあり、該当する部署からの報告をそのまま鵜呑みにせざるを得ないというのが一般的になってしまっています。

 

あえていえば、そこまで能力を求められなかったという現実があるのです。

 

しかしこの10年ほどで、企業はM&Aなどの敵対的買収の防衛に当事者として巻き込まれるようなケースも出てきました。経営の意思判断をするにあたって、数字に弱い会社で起きている諸問題を数値で的確に把握し、その上で対処するというレベル感が最低限求められるようにトレンドが変わってきました。

 

こうした背景を踏まえると、COOにする前にCFOを経験させようという考え方が定着してきたことは自然なことなのかもしれません。

 

ですから、「営業は滅法強いけれど数字に極端に弱い」という昔ながらの社長像はかなり減退してきています。

 

したがって、「自分が数字に弱い」という自覚がある人は、早めに勉強に取り組むことをおすすめします。初歩的なことであれば、日商簿記2級で学ぶようなスキルも役に立ちます。こういった数値の基本を独学で学ぶのは意義深いことです。また数字に弱い人はMBAの科目履修などでぜひアカウンティングを学んでみましょう。

 

もしかすると英語よりもキャリアアップに効くかもしれません。

 

さらに最近では、慢性的な人不足および急速なグローバル化の進行によって、社員の採用・教育が問題になりがちです。人事関連業務の高度化と専門化が進み、世界的な潮流としてヒューマンリソース(HR)の経営に占める重要性が急速に増しており、それに伴って最高人事責任者=CHROのプレゼンスも拡大しています。

 

最近、外資系のトップレベルの企業では、CEO候補には前述の通りCFOに加え、CHROを経験させる傾向が出てきており、あらかじめこのルートを明示するケースも増えています。すなわちCFOとCHROを40歳代から50歳代前半に経験しておくことは重要であり、言い換えれば、会社からそのような抜擢を受けたということは、CEO候補としてかなり有力なポジションにいるということになります。

 

ここまでみてきた通り、「人事」「経理」「財務」の3つは、機会を見つけて戦略的に勉強し、部署移動の際は挙手をしてでも早めに経験しておくことが、キャリア上の重要なポイントになるということです。

 

これらの専門的なスキルとノウハウを自分のものにしていれば、社長への道は確たるものになることでしょう。時代の変化と業界の現状をよく観察しながら、確実にトップに向けてステップアップしていきたいものです。