ピーク時は“年商億超え”貯金は4,500万円だが…63歳・自営業夫婦〈年金月12万円の老後生活〉が招く17年後の悲劇【FPの助言】

ピーク時は“年商億超え”貯金は4,500万円だが…63歳・自営業夫婦〈年金月12万円の老後生活〉が招く17年後の悲劇【FPの助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

老後、安心して暮らすためにも貯蓄は当然大切ですが、貯蓄以上に考えなければならないのは「老後の収入」でしょう。多くの人にとって「老後の収入=年金」となるため、年金受給額が少ないと、たとえ十分な貯蓄があっても「安心の老後生活」を手に入れることはできません。そこで、株式会社よこはまライフプランニングの代表取締役、井内義典CFPが、具体的な事例を交えて「年金受給額の増やし方」を解説します。

まずは65歳までに年金を増やす

最終的に繰り下げる年金ですが、65歳までに年金受給を増やす機会があります。

 

Aさんも奥さんもそれぞれ、月6万円、つまり年間72万円の老齢基礎年金となると、満額(年額79万円程度)には届きません。そこで、63歳から65歳になるまで国民年金に任意加入することによって、年金受給額を増やすことが可能です。

 

任意加入して国民年金保険料(2023年度:月額1万6,520円)をちょうど2年間納付すると、40万円程度の保険料支出ですが、老齢基礎年金は年額4万円程度増やすことができます。

 

また、国民年金保険料に合わせて月額400円の付加保険料を納付することができ、1ヵ月の納付につき200円の付加年金も増やせます。国民年金保険料と付加保険料の2年の納付により、老齢基礎年金と付加年金の合計で年額76万5,000円程度になるでしょう。72万円から4万5,000円増えたことになります。

 

任意加入で年金額を増やせば、その額に繰下げ増額率を適用するため、約76万5,000円に増やしてから75歳開始で受給を開始すると、Aさんも奥さんも年間140万円(76万5,000円×184%)ずつ、2人で280万円程度になります。この増額率で増えた年金が生涯続くことになるのです。なお、任意加入をする場合は市区町村の国民年金の窓口で早めの手続きが必要になります。

 

そのほか、任意加入で国民年金被保険者になれば同時にiDeCoに加入もできます。ただし、掛金がかかり、65歳になるまでの最大2年間しか加入できず、また自己責任での運用となりますので、その点も含めて慎重に検討する必要があるでしょう。

無理のない範囲で働いて資産寿命を伸ばす

75歳で繰下げ受給をするとなると、その前までは年金収入は0円で、貯蓄に頼るしかありません。

 

Aさん夫妻は現預金が4,500万円あるものの、繰下げ受給開始前まで年金収入がないままなにも対策しない場合、少し切り詰めた生活をしても、これはこれで75歳頃に貯蓄が枯渇する恐れがあります。

 

また、年金の受給開始までに想定外の支出が発生するリスクもあります。そのため、少しでも多く貯蓄しておいたほうが安心です。

 

老後を資金面で不安なく過ごすためには資産寿命を伸ばすこと、そのためには廃業後も引き続き収入を得ることがポイントです。

 

今まで店の経営をしてきたAさんが、いきなり就職する、別の仕事をするというのは簡単ではないかもしれませんが、単発の仕事でもそれを繰り返して少しでも収入があるのと、それがまったくないのとでは大きな差があります。

 

廃業後も働いて得た収入があれば貯蓄の取り崩し額を減らすこともできますので、無理のない範囲で収入を得られるよう仕事をしてみるのがよいでしょう。

 

一方、奥さんも腰を痛めてしまっていますが、身体に負担を掛けない在宅業務で小遣い程度でも稼ぐことができれば、何もしない場合と比べて貯蓄残高が違ってきます。

 

このように、貯蓄の利用もできるだけ少しずつとし、75歳の年金受給開始以降も、貯蓄を年金収入(280万円)では賄えない支出に回せるようにしておくのが理想です。

 

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