今回は、外資系ホテルと地方ホテルの動向を紹介します。※本連載は、インバウンド評論家、フリーエディターとして活躍する中村正人氏の著書、『ホテル業界大研究』(産学社)の中から一部を抜粋し、活性化するホテル業界の最新事情を紹介します。

勢いづく外資系ホテル、差別化に注力する日系ホテル

外資系ラグジュアリーホテルの相次ぐ進出は、日本の老舗高級ホテルに生まれ変わりを迫っている。たとえば、「御三家」のひとつ、ホテルオークラ東京は現在、本館の建て替えに着手している。

 

前回の東京五輪の2年前(1962年)に開業した同ホテルは老朽化が長く課題となっていたが、約1000億円を投じて高さ195mと90mの2棟のビルを新設する。42階建ての高層棟をホテルとオフィスの複合施設にする計画だ。

 

旧赤坂プリンスホテル跡地でも再開発計画が進行中で、新たな高級ホテルが誕生する。アマン東京が進出したばかりの大手町では、「都市型(温泉)旅館」という日本ならではのカテゴリーを掲げる「星のや東京」も進出。天然温泉を完備して外資との差別化を図るという。

 

これらの連動した動きは、多様な外国客のニーズに応えるべく、日本のホテルシーンの活性化をもたらすことを期待したい。

京都・大阪の客室稼働率は「東京を超える」高い水準に

同じことは、京都でも起きている。14年2月、ザ・リッツ・カールトン京都が開業。古都の景観を守るため、地下2階まで掘り下げてレストランや宴会場を配置した。料金は1泊6万5000円からという。15年春には米スターウッドグループの最高級ブランドである翠嵐ラグジュアリーコレクションホテル京都も開業した。

 

京都は盆地で、1200年以上の歴史遺産も多く、大規模再開発によるホテル建設に適した土地を見つけるのは難しいといわれた。これまで修学旅行などの団体客を多く受け入れていたが、少子化の影響で国内需要は限界があり、外国客は増加基調にある。

 

米国の旅行雑誌「トラベル+レジャー」が2014年7月発表した世界の人気観光都市ランキングで、京都市が初めて1位となった。

 

同誌は北米の富裕層を中心に読まれる月刊誌で、発行部数は約100万部。ランキングは風景や文化・芸術、食などの項目の総合評価で決まる。京都市を14年訪れた観光客数は5564万人、外国人宿泊客数は183万人(前年比62%増)と過去最高だった。

 

こうしたことから、行政も世界の富裕層の力で京都を活性化しようと規制緩和や特例措置で高級外資の誘致を後押ししている。16年秋に開業予定の「フォーシーズンホテル京都」は東山地区の病院跡地に建てられた。当初は隣に京都女子高校があったため、ホテル建設は認められていなかったが、例外規定で進出が実現したのだ。

 

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の人気で、大阪のホテル競争も激しくなっている。14年7月の人気映画『ハリー・ポッター』をテーマにした新エリアの開設で、同社と提携するホテルは利用者が大幅に増えている。

 

15年に関西国際空港を利用する外国客が1001万人(前年比59%増)と4年連続で前年を上回り、過去最高となっている。

 

背景には、関空に乗り入れる国際旅客便の発着回数が過去最高となったことがある。LCC(格安航空会社)が占める比率が31.7%(15年冬季:週339便)と上昇した影響が大きい。関西の訪日旅行市場は全国・関東平均を上回るペースで拡大。ホテルの客室稼働率も全国一の高さとなっている。

 

ホテル業界大研究

ホテル業界大研究

中村 正人

産学社

訪日外国人旅行者の急増、外資系ホテルの日本進出…新業態ホテルも続々登場し、活性化を加速するホテル業界。 数々の話題やトレンド、ビジネスの最新動向など業界のことがもっともよくわかる書籍となっています!

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