年金受給年齢繰り下げ、医療費負担増……。必ず起きる想定外
「老後資金2000万円があっという間に溶けてなくなった上、借金をする事態に陥った」というようなことは、誰にでもあり得る出来事です。しかし読者の方の中には「そもそも2000万円を貯めることすらできないのに、ライフプランもへったくれもあるもんか」という方もいるでしょう。
働いて稼ぎも増えてきたはずなのに、貯蓄になかなか回らない人は少なくありません。金融機関の口座にはボーナスが振り込まれていたのに、いつの間にか残高が少なくなっていたという話もよく耳にします。
こうした悩みの多くは、毎月の支出で何に、いくらかかっているのか十分に把握していないことが原因で、ライフステージごとに生じる様々なイベントの費用を頭に入れず、クレジットカードなどを利用した場合は後に引き落とされるため、「あったはずのお金が消えた」と感じるのでしょう。月々の収支、生涯に必要な費用を理解しておくことは不安な老後を迎えないために欠かせません。
では、人生の様々なイベントにはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。「人生の三大支出」と呼ばれる住宅資金、教育資金、老後資金について考えてみましょう。
まず、人生最大の買い物となる「住宅」は土地付き注文住宅を購入する場合、平均で約4400万円が必要です。新築マンションは約4500万円で、中古マンションでも約3000万円の物件購入代金がかかります。この他にも不動産の登記費用や仲介手数料、住宅ローン手数料、火災保険料などが必要です。
次は「教育」です。子供がいる家庭は長期的に考えると大きな教育費が必要となります。幼稚園は3年間で公立は70万円、私立で160万円ほどになります。小学校(6年間)は公立190万円、私立960万円。中学校(3年間)は公立150万円、私立420万円、高校(3年間)は公立140万円、私立290万円が平均となっています。大学は国立大ならば約240万円で収まりますが、私立は文系で約400万円、理系では約540万円が必要です。
幼稚園から大学まですべて国公立で進んだ場合は1000万円弱ですが、習い事や学習塾などの学校外活動費を含めれば約1750万円が必要です。すべて私立ならば2230万~2370万円に加えて、学校外活動費がかかります。
3つ目の「老後」については、夫婦2人でゆとりのある生活を送りたいならば毎月約38万円は必要となります。しかも、「住宅」「教育」と違って生きている限り毎月かかる支出です。老後までの貯蓄はいくらあるのか、公的年金はどれほどもらえるのか、退職金でどれくらい賄えるのか、などをできるだけ早い段階から考え、計画的に歩まなければ「貯蓄に回らない」「残高がいつの間にか少なくなっていた」という悩みは解消されないでしょう。
この他にも結婚費用が平均約400万円、住宅リフォーム資金約180万円、葬儀費用約120万円×人数分などが必要になってきます。収入という「入」の部分については時給まで細かくチェックする人でも、「出」の部分である支出については大雑把にしか把握していないケースが見られます。特に「人生の三大支出」というような大きな費用は金銭感覚が麻痺してしまったり、見栄を張ってしまったりして必要以上のお金をかける人もいるので注意が必要です。