「おひとり様」の老後の頼りは“自分だけ”
近年は「おひとり様の老後」と言っても死別や離婚ではなく、一度も結婚をしたことがない人も増えています。
未婚率は増加の一途をたどっており、厚生労働省の「厚生労働白書」(2021年版)によれば、2020年の50歳時の未婚割合は男性26.7%、女性17.5%で、今後も「おひとり様」が増えていくと予想されています。
結婚する、しないは自由です。希望していても運命の人に出会う機会がないといったケースもあるでしょう。ただ、配偶者や子供がいない「おひとり様」にとって、老後生活の頼りにできるのは自分だけです。生活はどうなるのか早めにイメージしておくことが重要となります。
生涯独身の「おひとり様」が陥る「老後破綻ルート」
厚労省の「国民生活基礎調査」(2021年)によると、65歳以上の人がいる世帯は全体の半数近い約2581万世帯となっています。「夫婦のみ」の世帯が約825万世帯で最も多く、「単身世帯」は約743万世帯です。この数字を見れば、一人で暮らすシニアはかなり多いことが分かります。
では、「おひとり様」の老後の家計はどのようになっているのでしょうか。
総務省の「家計調査年報」(2020年)を見ると、65歳以上の単身無職世帯は1ヵ月の可処分所得(税金や社会保険料など除く)が平均約12万5,000円となっています。
一方、支出の方は約13万3,000円で毎月約7,700円が不足していることになります。年間9万3,000円の赤字になりますが、これだけを見れば「意外と少なく、クリアできそうだな」と感じる人もいるのではないでしょうか。
ただ、軽く考えるのは早計と言えます。その理由は老後の収入が男性と女性で大きく異なるからです。厚労省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(2020年度)を見てみましょう。
公的年金の平均受給額は男性が月額約17万円あり、先の可処分所得を上回っています。これだけ受け取っていれば、たしかに「クリア」できる可能性は高まります。しかし、女性は月額約11万円です。男女の差は約6万円になっています。
その理由は、厚生年金受給額は加入している期間や年収で大きく異なるためで、現役時代の賃金差が老後に現れてしまうことを意味しています。この平均値で考えれば、女性は毎月約2万3,000円が不足し、1年間で27万6,000円の赤字が生じることになります。仮に90歳まで元気だった場合でも25年間で約690万円に達します。