(写真はイメージです/PIXTA)

欧州委員会統計局が7月31日に公表した一次速報値によると、23年4-6月期のユーロ圏20ヵ国GDPは前期比0.3%、前年同期比0.6%の成長率を示しました。本稿ではニッセイ基礎研究所の高山武士氏が、ユーロ圏主要国の成長率を概観し、各国統計局が詳細を発表しているフランス・スペインについては、産業別の動向等、詳細について解説します。

1.結果の概要:前期比成長率は加速

7月31日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏GDPの一次速報値(Preliminary Flash Estimate)を公表し、結果は以下の通りとなった。

 

【ユーロ圏20か国GDP(2023年4-6月期、季節調整値)】
前期比は0.3%、市場予想1(0.2%)を上回り、前期(0.0%)から加速した(図表1)
前年同期比は0.6%、市場予想(0.5%)を上回ったが、前期(1.1%)から低下した(図表2)

 

 

 


1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様

2.結果の詳細:成長率の改善幅は小幅にとどまる

2023年4-6月期の成長率は前期比0.3%(年率換算1.1%)だった。22年10-12月期の小幅マイナス成長(前期比▲0.1%、年率換算▲0.2%)、1-3月期のゼロ成長(前期比0.0%、年率換算0.1%)からやや加速し、実質GDPの水準はコロナ禍前(19年10-12月期)と比較して+2.7%の水準となっている。

 

経済規模の大きい4か国の伸び率を見ると、前期比ではドイツ0.0%(1-3月期▲0.1%)、フランス0.5%(1-3月期0.1%)、イタリア▲0.3%(1-3月期0.6%)、スペイン0.4%(1-3月期0.5%)となり、ドイツとフランスは1-3月期から改善、イタリアとスペインは1-3月期から悪化した。

 

公表された10か国のうちではイタリアのほか、ラトビア(前期比▲0.6%)とオーストリア(前期比▲0.4%)がマイナスとなり、残りの7か国もアイルランド(前期比3.3%)とリトアニア(前期比2.8%)を除き、0%台前半から半ばの小幅なプラスにとどまっている(図表3)。

 

一方、実質GDPの水準は、これまでコロナ禍からの回復が遅れていたドイツやスペインを含めて、コロナ禍前を上回った(図表4)。

 

 

次にフランスとスペインは各国統計局(フランス国立統計経済研究所(INSEE)、スペイン統計局(INE))がGDPの詳細を公表しているので、以下で見ていきたい。

 

フランスの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費▲0.3%(前期0.0%)、政府消費▲0.0%(前期▲0.2%)、投資0.1%(前期▲0.4%)、輸出2.6%(前期▲0.8%)、輸入0.4%(前期▲2.0%)となった(図表5)。在庫変動は前期比寄与度▲0.1%ポイント、純輸出が前期比寄与度0.7%ポイントであり、フランスでは内需が弱い状況が継続している。

 

産業別の付加価値は、工業が1.4%(前期0.6%)、建設業が1.2%(前期0.7%)、市場型サービス産業0.8%(前期▲0.1%)、非市場型サービス0.1%(前期0.5%)となり、非市場型サービスを除き、概ね成長が加速している。

 

より細かい業種では、鉱業のうち電気・ガス・水道が前期比2.3%(前期▲0.0%)と高めの成長率を記録したほか、1-3月期に比較的大きなマイナスとなった輸送業(1.4%、前期▲1.6%)や居住・飲食業(0.7%、前期▲0.8%)もプラス成長に転じている。

 

 

 

スペインの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費1.6%(前期▲1.4%)、政府消費1.5%(前期▲1.6%)、投資4.6%(前期1.7%)、輸出▲4.1%(前期5.6%)、輸入▲1.0%(前期2.7%)となり、スペインでは消費や投資など内需が持ち直している(図表6)。

 

産業別には、工業が▲1.6%(前期1.0%)、建設業が2.8%(前期2.4%)、サービス業が1.0%(前期▲0.0%)となり、細かい業種で見ると、製造業(▲1.2%、前期1.6%)の落ち込みが目立った。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年8月2日に公開したレポートを転載したものです。

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