直近の「消費者マインドアンケート調査」の結果
~暮らし向き判断DI・物価判断DIの水準は厳しいが、「変化の方向」を見れば改善を感じられる状況
内閣府「消費者マインドアンケート調査」は16年9月から実施されている、誰でもが回答できるユニークな調査です。そのため月により回答数が異なり若干の振れを伴う感じはありますが、結果の公表時期が当該月の22日~24日頃と早く、基調を的確に把握することができます。
直近の7月調査までの結果を「景気ウォッチャー調査」流にDI化してみると、暮らし向き判断DIは22年9月から23年1月の5ヵ月間は20台でしたが、23年2月から23年7月の6ヵ月間は30台と持ち直しています。但し、23年7月暮らし向き判断DIは34で、全調査期間の平均の37をやや下回っています。
ロシアのウクライナ侵攻による世界的なエネルギーや穀物価格の上昇が意識された22年3月から23年7月の17ヵ月間では、物価上昇判断DIは86~91の高水準で推移し、その期間の平均は88と全調査期間の平均の75を上回っています。23年7月は88で6月の91からやや鈍化しました。
暮らし向き判断DI・物価上昇判断DIとも、水準を見ればまだ厳しいという判断ができますが、変化の方向を見れば改善が感じられる状況です。最近発表された身近なデータもそうした傾向のものが多いと思われます。
好調なインバウンド需要だが、まだ水準はコロナ前に届かないものも
~観光地の定番、姫路城や金沢兼六園は「前年同月比は上回る」も「コロナ前未満」
インバウンド需要は好調です。6月の景気ウォッチャー調査「外国人orインバウンド」関連DIは、現状判断が69.1、先行き判断が67.6とどちらも景気判断の分岐点である50を大きく上回っています。6月の外国人観光客百貨店売上高は前年同月比+320%の高い伸び率です。
訪日外客数は新型コロナの影響で20年から22年の3年間は少なかったものの今年は持ち直しました。6月の訪⽇外客数は207万人。コロナ前の19年同月比は▲28%ですが、前年同月比は+1,622%で、コロナ禍で訪⽇外客数が大幅に減少した20年2月以降、初めて200万人を突破しました。また、23年1〜6月までの累計は1,071万人となり、上半期の時点で1,000万人を超えました。
日本人の旅行動向を、JTBの夏休みの旅行に関する調査でみましょう。夏休み期間(2023年7月15日~8月31日)の旅行動向については、総旅行人数(延べ)は7,370万人(前年比+17.8%、19年比▲2.3%)、総旅行消費額は3兆1,772億円(19年比▲5.0%)と推計されています。このうち、国内旅行人数は7,250万人(前年比+16.9%、19年比+0.1%)、国内旅行平均費用は40,000円(前年比+8.1%、19年比+9.6%)、国内旅行消費額は2兆9,000億円(前年比+26.4%、19年比+9.7%)が見込まれるということです。一方、海外旅行人数は、120万人(前年比+114.3%、19年比▲60.4%)、海外旅行平均費用は231,000円(19年比▲0.4%)、海外旅行消費額は2,772億円(19年比▲60.6%)と推計しています。国内旅行に比べ海外旅行需要はコロナ前に比べてまだまだ弱いようです。
いくつか観光地の動向をみると、世界遺産で外国人観光客も多く訪れる姫路城の入場者数は、21年11月から直近23年6月まで20ヵ月連続で前年同月比増加となっています。6月は1年の中でも入場者数が少なめの月のひとつですが、23年6月は5.6万人、前年同月比+24.9%の増加になりました。但し、コロナ前の19年6月の10.9万人にはまだ届いていません。
金沢兼六園も同様の傾向です。23年6月は14.3万人、前年同月比+54.2%の増加ですが、コロナ前の19年6月の16.6万人にはまだ届いていません。
JRA売得金・累計前年比、7月23日までの週でマイナス圏を脱出
~年初来もたついていたが、今後増加に転じて「12年連続増加」になると期待
22年のJRA売得金は前年比+5.8%と、98年から11年まで14年間連続前年比減少の後、12年から11年連続で前年比増加でした。
しかし、23年に入ってからのJRA売得金はもたついた動きになっていました。2月後半から3月初には、年初の減少から一時増加に戻ったものの、昨年3月21日までで最後の地域で、まん延防止等重点措置を終了した影響が出たためか、3月26日までの週の累計前年比が▲2.7%の減少でした。しかし、減少率は4月16日までの週の▲2.8%から7月16日までの週で▲0.1%まで縮小し、7月23日までの週で累計前年比が0.0%とついにマイナス圏を脱しました。JRA売得金・累計前年比は、徐々に改善してきており、今後増加に転じ12年連続増加になることが期待されます。
6月単体でみると「刑法犯総数の認知件数」の増加率も頭打ち
~刑法犯総数の認知件数・四半期ごとの前年同月比は、23年1~3月期がピーク。4~6月期で伸び率は鈍化傾向に
景況感と犯罪統計にはそれなりの関連があると思われます。ロシアのウクライナ侵攻などで景気の先行きに不透明感が生じ3月に20台まで「暮らし向き判断DI」が弱含んだ22年は、刑法犯総数の認知件数は60.1万件、前年比+5.9%と20年ぶりの増加に転じました。23年1~6月の上半期は33.3万件、前年比+21.1%の増加になっています。
但し、6月単月では前年比+17.5%と幾分増加率が頭打ちになっています。四半期ごとの前年同月比をみると、23年1~3月期がピークです。4~6月期はまだ2ケタ増加ですが、伸び率は鈍化傾向にあることがわかります。
※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。 さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。 23年4月からフリー。景気探検家として活動。 現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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