(※写真はイメージです/PIXTA)

民主主義諸国の価値観を根底から変えた「ウクライナ戦争」。その陰で、中国による「台湾進攻」が現実味を帯びてきていると、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏はいいます。その根拠とは……詳しくみていきましょう。

政府が経済活動に干渉しない“レッセフェール”の限界

そうした非常事態的体制として、米国でのレッセフェールの否定、大きな政府へのシフトという、レーガノミクス登場以来40年ぶりのレジーム転換が実現しつつある。

 

[図表1]レッセフェールから大きな政府へ
[図表1]レッセフェールから大きな政府へ

 

[図表2]現在の米国(先進国)の基本矛盾・利潤率と利子率の乖離
[図表2]現在の米国(先進国)の基本矛盾・利潤率と利子率の乖離

 

先進国経済においては、レッセフェールの限界ははっきりしていた。富が企業や富裕層に集中する一方、中間層が衰弱し、格差拡大と社会的分断が引き起こされているという現実がある。

 

米国経済にある「3つの目詰まり」

当社がかねて紹介してきたように、現在の米国経済には、3つの目詰まりがあるといえる。まず、

 

1.新産業革命が企業に超過利潤、貯蓄余剰をもたらしていること

2.労働者の実質賃金はほとんど成長せず、家計の所得は労働外所得(資産所得と政府補助)に依存するようになっていること

3.企業利益の8割が株主還元され株高が維持されることで(家計純資産増加、家計資産所得増加の形で)、富は家計に配分されているものの、それは十分ではなく偏りがないともいえないこと

 

である。レッセフェールが期待したトリクルダウンが機能していないといえる。

 

[図表3]米国非管理労働者平均賃金推移(名目・実質)/[図表4]米国個人所得構成比推移
[図表3]米国非管理労働者平均賃金推移(名目・実質)/[図表4]米国個人所得構成比推移

 

[図表5]米国株式投資主体別累積投資額/[図表6]米国家計の資産、債務、純財産推移
[図表5]米国株式投資主体別累積投資額/[図表6]米国家計の資産、債務、純財産推移

 

ウクライナ戦争が正当化した、政府による産業・貿易介入

民主党の穏健派、バイデン政権は3つの柱からなるレッセフェール修正案を提示していた、つまり、

 

1.成長の質の重視(格差縮小・中間層への高配分)

2.産業政策の導入

3.国内雇用最優先の貿易政策(消費者優先ではない)

 

である。他方、共和党の小さな政府、レッセフェールを志向するグループはそれに反対していた。

 

しかしウクライナ戦争勃発により、非常事態体制の確立が必要との認識が共有され、強力な産業政策が成立することとなった。またトランプ政権から継承した対中貿易制裁、米国の輸入障壁を引き下げ国内雇用に悪影響を及ぼすと考えられるTPPへの不参加などの貿易規制はさらに強化されている。

 

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※本記事は、武者リサーチが2023年7月11日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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