政府が経済活動に干渉しない“レッセフェール”の限界
そうした非常事態的体制として、米国でのレッセフェールの否定、大きな政府へのシフトという、レーガノミクス登場以来40年ぶりのレジーム転換が実現しつつある。
先進国経済においては、レッセフェールの限界ははっきりしていた。富が企業や富裕層に集中する一方、中間層が衰弱し、格差拡大と社会的分断が引き起こされているという現実がある。
米国経済にある「3つの目詰まり」
当社がかねて紹介してきたように、現在の米国経済には、3つの目詰まりがあるといえる。まず、
1.新産業革命が企業に超過利潤、貯蓄余剰をもたらしていること
2.労働者の実質賃金はほとんど成長せず、家計の所得は労働外所得(資産所得と政府補助)に依存するようになっていること
3.企業利益の8割が株主還元され株高が維持されることで(家計純資産増加、家計資産所得増加の形で)、富は家計に配分されているものの、それは十分ではなく偏りがないともいえないこと
である。レッセフェールが期待したトリクルダウンが機能していないといえる。
ウクライナ戦争が正当化した、政府による産業・貿易介入
民主党の穏健派、バイデン政権は3つの柱からなるレッセフェール修正案を提示していた、つまり、
1.成長の質の重視(格差縮小・中間層への高配分)
2.産業政策の導入
3.国内雇用最優先の貿易政策(消費者優先ではない)
である。他方、共和党の小さな政府、レッセフェールを志向するグループはそれに反対していた。
しかしウクライナ戦争勃発により、非常事態体制の確立が必要との認識が共有され、強力な産業政策が成立することとなった。またトランプ政権から継承した対中貿易制裁、米国の輸入障壁を引き下げ国内雇用に悪影響を及ぼすと考えられるTPPへの不参加などの貿易規制はさらに強化されている。
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