(※写真はイメージです/PIXTA)

民主主義諸国の価値観を根底から変えた「ウクライナ戦争」。その陰で、中国による「台湾進攻」が現実味を帯びてきていると、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏はいいます。その根拠とは……詳しくみていきましょう。

中国の「台湾進攻」はロシアのウクライナ侵略よりハードル低い

ウクライナ戦争は世界の民主主義諸国の価値観を根底から変え、各国の政策レジームを大転換させている。2021年までは、G7に結集する民主主義先進国の人々は法が支配する安全な秩序のもとにあるという神話を信じていた。

 

しかし、プーチン氏のウクライナ侵略により、この世は未だに弱肉強食のジャングルの掟が貫徹しているのだ、ということを思い知らされた。

 

専制国家群と民主主義国家群の和解の無い対立が熾烈化するなかで、民主主義諸国の盟主である米国は、プーチン氏とは比較にならない手強いライバルである中国に対する備えを、最大限のスピードで構築し始めた。深く考えれば、プーチン氏のウクライナ侵略よりは、習近平氏の台湾進攻のほうがはるかにハードルが低い。

 

中国は、

 

1.人口、経済力、軍事力において圧倒的優位にあること

2.ウクライナは独立国家だが台湾は中国の一部であることを、米国も国連も認めているこという道義的正当性が存在すること(もちろん民主主義諸国は認めていないが)

3.国内の統治能力は議会制民主主義を取っている(形ばかりとはいえ)ロシアより、一党独裁かつ個人への権力集中が貫徹した中国のほうがはるかに大きいこと

 

の3つは否定しがたい事実である。

 

加えて、中国経済の衰弱、人口減少から中国の国際的プレゼンスはここ5年がピークであり、台湾統一という国家悲願の実現には、米中の国力がもっとも接近している現在が最後のチャンスである、と習近平氏が考える蓋然性は高い。

 

中国を思い留まらせるには「米国介入への意志の強さ」しかない

習氏を思い留まらせる唯一の要素は米国の介入への意志の強さしかない、少なくとも米国指導部はそのように考えているはずであり、それに対応して非常事態的政策を遂行し始めた、と見るべきだろう。

 

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※本記事は、武者リサーチが2023年7月11日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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