(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

 

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【インド経済】「米中対立によるインドへの影響は?」

→インドは脱中国という点で恩恵を受ける立場。インドの柔軟な外交姿勢も国益につながり、経済・市場に追い風。

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インドの人口が世界一位に

●国際通貨基金(IMF)のデータによると、インドの人口は2022年に中国を抜き、世界一位となりました。また、国連人口基金(UNFPA)が発表した世界人口白書においても、2023年にインドが中国を抜き、世界一位となる見込みです。いずれにしても2022~2023年にインドの人口が世界一位になる模様です。図表1の通り、中国の人口はすでに減少局面に入っているのに対して、インドの人口は増加局面にあります。人口が増加局面にあることは、生産面から潜在成長率を押し上げる要因であり、インド経済の大きな魅力です。

 

[図表1]インドと中国の人口

インドは循環的な景気モメンタムが上向き

●インドの鉱工業生産指数を弊社で季節調整し、3ヵ月前比を計算すると、2022年11月以降モメンタム(勢い)が上向いていることがわかります。インドのモディ政権は2023/24年度の政府予算において、公共投資に高い伸びを設定しているため、資本財を中心に生産のモメンタムが加速しています。

 

●一方、中国の鉱工業生産(季節調整値)から同様に3ヵ月前比を計算すると、中国の生産は2023年もモメンタムが低迷したままです。中国では住宅価格の下落と雇用環境の悪化を受けて需要不足が発生しているため、生産のモメンタムは停滞から抜け出しにくい状況になっています。このように、景気モメンタムを見ると、インドは加速、中国は低迷という形で明確な違いが出ています。

 

[図表2]インドと中国の鉱工業生産モメンタム

米中対立で恩恵を受けるインド、全方位外交も強み

●2022年から米バイデン政権は中国に対して半導体および半導体装置に関する様々な規制を行っており、日本など他の先進国もこの規制に参加しています。5月に広島で開催された主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)の共同声明で謳われたように、G7各国は中国への経済進出においてリスク管理を強化しており、サプライチェーン(供給網)の多様化を進めています。

 

●インドはこうした脱中国の動きのなかで、恩恵を受ける立場にあります。前回の「アジアトーク(2023年6月21日)」でも指摘した通り、米アップルなど多くのグローバル企業が、インドに積極的に進出する意思を表明しています。

 

●米国と中国との対立が長期化する様相を見せている状況下、米国は、グローバルサウスの盟主とされるインドと友好関係を強化し、西側陣営に引き寄せることを志向しているとみられます。実際、中国を外した、米国主導のインド太平洋経済枠組み(IPEF)では、インドは自国産業を保護するために貿易の協議に参加しない意思表明をしましたが、米国はこれを容認し、インドが同経済圏構想に参加しています。

 

[図表3]インド太平洋経済枠組み(IPEF)の参加国

 

●一方、インドは武器輸入においてロシアとの取引を続けており、ウクライナに侵攻したロシアを正面から非難することを避けています。また、ロシア天然ガス大手のノバテク社は2023年2月、インド企業に対して液化天然ガスの決済をインドルピー建てで認めるなど、インドとロシアは経済面で良好な関係が継続しています。

 

●このように、全方位外交のインドは、必要に応じて米国寄りの姿勢、中国寄りの姿勢を柔軟に使い分けることで、インドの国益にとってより有利な選択肢を選べる立場にあり、実際にそのように行動しています。インド外交の柔軟性は、インドの国益に根差していることから、経済や市場に対してプラスに作用すると思われます。

 

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

脱中国で中国株からインド株へシフトの動き

●人口増加、景気モメンタム、グローバル企業の投資、柔軟な外交姿勢による国益強化などを背景としたインド経済の成長期待から、インドの代表的な株価指数のSENSEX指数は上昇基調にあり、足元で過去最高値を更新しています。一方、経済成長が減速した中国では、代表的な株価指数のCSI300指数はやや軟調な展開が続いています。2021年半ばからは、インド株価指数と中国株価指数には逆相関の動きがみられます。

 

●この一因として、米中対立の長期化による脱中国の動きを嫌気して、外国人投資家が中国株式市場からインド株式市場に投資資金をシフトさせている可能性を指摘できます。足元では、中国のデフレリスクが浮上したため、その傾向が強まっている模様で、インド株へのシフトは当面続く可能性があります。

 

[図表4]インドと中国の株価指数

 

(2023年7月21日)

 

※当資料は「アジアリサーチセンター」のレポートを基に作成しています。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【脱中国で恩恵】米アップルなど多くのグローバル企業が〈進出表明〉…米中対立で追い風の「インド」、これだけの“魅力”(ストラテジストが解説)』を参照)。

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

 

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
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