都内で生まれ育った35歳の米田さん。27歳のとき結婚が決まり晴れて「寿退社」となりましたが、その先に待っていたのは「孤立無援」の悲惨な現実でした……。『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』(講談社現代新書)の著者でジャーナリストの小林美希氏が取材してわかった、“働きたいけど働けない”女性の悲痛な叫びをみていきましょう。
専業主婦の35歳・女性、育児ノイローゼで「もうダメだ」…愛する娘にしでかした「蛮行」【ジャーナリストの実録】 (※写真はイメージです/PIXTA)

“私っていったい何なのだろう”…専業主婦として始まった「孤独な新婚生活」

「私は下のほうで生きている」コンビニは行かず、クーラーもつけない生活
※取材対象──東京都・米田美鈴(35歳)・自治体職員・年収348万円(世帯年収1,000万円)

 

東京から離れて知らない土地で始まった専業主婦としての新婚生活は、孤独でした。夫は長時間労働で、夫が働いている間、私はひとり。誰とも話さないで過ごすしかないんです。働きたかったけど、いつまた夫が転勤するか分からないから、普通に職探しができませんでした。パートであっても、急に辞めるなんていえば迷惑をかけることになると真面目に考えていて。

 

稼ぎがない自分が後ろめたくて、夫がいない昼間は電気を消し、クーラーもつけませんでした。水道代の節約に、トイレは3回に1回しか流さない。そんな生活を送っていました。

 

たまに地元の友達と会うと「昔は、輝いてたじゃん」と言われ、ちょっとショックでしたね。ああ、今の自分は周りから見てもパッとしないんだなって。

 

妊娠が分かって嬉しかったのですが、産婦人科で夫の姓で呼ばれると、「私って、いったい、何なのだろう」って思いました。なんで女だから姓を変えなきゃならないの? なんで、仕事を当たり前のように続けられなくなるの? と。

 

でも、女の子が生まれて、やっと「自分は子育てという仕事をしている」と思えるようになったんです。夫から渡される生活費のなかから、「たまには自分のものを買ってもいいか」と思えるようになったら少しだけ明るい気分になりました。

 

夫はずっと変わらず、長時間労働でした。育児は当然、専業主婦の私の役割となりました。

 

夫は土日に家にいても、絶対に赤ちゃんのウンチのオムツ交換をしないんです。この頃、私が食器を洗っている最中に娘がウンチをしたことに気づいた夫が「ウンチ出たよー!臭い、臭い」と私に言ってきました。これ、今も変わってないですが……。

 

ちょっと、私、お皿を洗っているんですけど! と頭にきて、食器洗いを中断し、手についた泡を洗って「いいよね。オムツ替えない人は」と嫌味を言ったら、夫は逆切れして。ドアをバーンと閉めて寝室に引きこもってしまったんです。

 

この時ばかりはムカムカして、私も「もう、いい!」と、プチ家出を決行しました。といっても、近所のスーパー銭湯に行っただけ。娘が大丈夫か気が気でなくなって40分くらいで家に戻りました。母親って、損ですね。なんてパパはお気楽なんだろうと思いました。