「眼内レンズの交換」は可能?
通常、眼内レンズは一度入れたら一生使い続けるものです。よって、患者さんは、あちらの医師が良かったとか、あのレンズのほうがこちらより良かったというように、比較ができません。見たい距離は一人ひとり違います。レンズを選ぶ際には、これまでどう生きてきたか、ということが、実は非常に大切なのです。
とはいえ、不具合が生じた際のサポートは当然ながら必要だと考えます。そのため僕のクリニックでは「やり直し外来」というものを設けています。
より高いレベルの見え方を、患者さんが求めるようになった現在、やり直し外来があればきっと喜んでいただけるだろうと感じたのです。
例えば、ある歯科医の方の白内障手術を十数年前に担当したときには、3回ほど眼内レンズを入れ替えることになりました。最初に彼が選んだのは、多焦点レンズでした。
当時の多焦点レンズも、遠くにも近くにもピントは合いましたが、その代わり見え方に慣れるまでに時間がかかったり、映像の正確さや鮮やかさが単焦点レンズに比べるとやや劣りました。多焦点レンズを2種類ほど入れ替えましたが、それでも満足のいく見え方には至りませんでした。
最終的には、1つの距離にピントが合う単焦点レンズを入れて、ようやく納得いただいたという経緯でした。この患者さんは、歯科医だけに、近距離がクリアに見えることにこだわりが強かったのです。現在のレンズになってからは、このような症例にはあっていません。
何度も手術をするのは目にとって負担が増しますから、あまり好ましいことではありません。しかし、高い技術をもってすれば、眼内レンズを入れ替えることは可能です。レンズの品質が良くなかった時代に眼内レンズを入れた患者さんからは、最新の多焦点レンズに変更したいという希望が出てきても不思議ではありません。
ただ、レンズを入れ替えるには、一度入れたレンズを小さく切って取り出す、あるいは傷口を大きく切って水晶体の袋ごと取り出す方法になり、手術の難易度が上がっていきます。
新たな選択肢としては、「アドオンレンズ」といって、もう1枚レンズを重ねる方法があります。最初に単焦点眼内レンズを入れている方で、多焦点眼内レンズにしたい場合、もう1枚レンズを重ねます。逆に多焦点眼内レンズに、単焦点眼内レンズを重ねるやり方もあります。
とはいえ、やはり「1回きりの手術で成功させる」のが大原則
日本の健康保険は病気に対してしか認められていません。度数がずれている、眼内レンズの相性が悪い、思っていたものと違った…などでは病気と認定されません。したがって多くの場合のやり直し外来の費用は、自費診療となります。
手術がうまくいっても、眼内レンズが合わなければ、手術は成功とはいえません。眼内レンズ選びで失敗しないためにも、カウンセリングを丁寧に行う医療機関を選ぶべきです。レンズを豊富に扱っているかどうかも、大事なことです。
医師はどうしても自分の使い勝手の良いレンズを選びたくなるものですが、多くの種類のレンズをそろえ、またはレンズの品ぞろえにしっかりとした根拠があり、患者さんの要望にあったレンズを提示してくれるクリニックを選ぶと安心です(保険診療の範囲では選べるレンズが、単焦点眼内レンズに限定されます)。
患者さん自身も、まずはどんな見え方を希望するのかを、よく考えておくべきです。どんな治療法、レンズ選びにも、メリット・デメリットがありますから、よく調べたり聞いたりすることが大切なのです。
手術後、こんな不具合が出たら主治医に相談を
僕のクリニックでは、おそらく日本初の「白内障やり直し外来」を設けました。当院の「やり直し外来」では、以下のような方を対象としています。
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●白内障の手術をすでに受けているが、とても見えづらく主治医からはメガネで様子を見るしかないと言われている。
●白内障手術をすでに受けているが、手術時に乱視や近眼が治るという説明を受けていなかった。今からでもメガネなしで見えるようにしたい。
●多焦点レンズがあるということを知らずに、単焦点レンズの手術を受けてしまった。または多焦点レンズが登場する以前に白内障手術を受けたので、今からでも多焦点レンズにしてみたい。
●夜間の見え方がよくない、視力は出るがモヤが常にかかっているような気がする。
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白内障手術のあとで、このような不具合がある場合には、主治医への相談が必要です。
残念ながら、白内障手術の際に、患者の皆さんが知らされていない内容は多くあります。不具合を感じて担当医に質問しても、医師に「手術は成功したので問題ありません」などと押し切られ、泣き寝入りの状況になっている方が多いのが現状です。
しかし、WEB検索をすると「白内障手術 やり直し」というキーワードがたくさん出てくるのです。困っている患者さんは多いのです。
中原 将光
中原眼科 院長