(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

 

●米利上げ継続の見方に変更しドル円の見通しもドル高・円安方向に修正、年末は140円を予想。

●日銀は7月にYCC調整との見方は不変、日米長期金利は年末から年始にかけ、低下する見通し。

●各期末の予想着地水準はドル高方向に修正も、この先緩やかなドル安・円高が進む見方を維持。

米利上げ継続の見方に変更しドル円の見通しもドル高・円安方向に修正、年末は140円を予想

弊社は6月22日、ドル円相場の見通しを更新しました。従来、ドル円の予想着地水準について、12月末は1ドル=133円、来年3月末は132円に設定していましたが、今回、着地水準をドル高・円安方向に修正し、それぞれ140円、139円としました【図表】。これは、主に米金融政策の見通し変更によるところが大きいのですが、その点も踏まえ、以下、ポイントを解説します。

 

【図表】日米10年国債利回りとドル円相場の見通し

 

まず、米金融政策について、弊社はこれまで、フェデラルファンド(FF)金利は年内5.00%~5.25%で据え置かれ、来年1-3月期から四半期毎に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げが行われるとみていました。しかしながら、米景気の底堅さと物価の粘着性が想定以上となったため、今般、7月と9月に25bpずつの追加利上げと(年末のFF金利は5.50%~5.75%)、来年4-6月期から四半期毎25bpの利下げ実施との見方に変更しました。

日銀は7月にYCC調整との見方は不変、日米長期金利は年末から年始にかけ、低下する見通し

一方、日銀の金融政策に関する弊社の予想は従来通りで、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)における10年国債利回りの許容変動幅は、7月に上下0.5%から1.0%に再拡大される公算が大きいとみています。これにより、YCCは実質的に形骸化することになりますが、日銀はYCCの枠組みとマイナス金利政策を当面維持することで、緩和継続の姿勢を示すと考えています。

 

以上の日米金融政策の見通しを踏まえ、長期金利動向を考えた場合、米国の10年国債利回りは、少なくとも7-9月期は追加利上げに支えられる展開が予想されるものの、利上げ終了後は、景気減速と利下げを織り込む形で、年末から年始にかけて緩やかな低下が見込まれます。日本の10年国債利回りは、YCCの許容変動幅再拡大で7-9月期に上昇する見通しですが、緩和の枠組み継続と米長期金利低下により、上昇圧力は次第に和らぐとみています。

各期末の予想着地水準はドル高方向に修正も、この先緩やかなドル安・円高が進む見方を維持

なお、足元では、日銀と米欧中央銀行の金融政策について、方向性の違いが改めて意識され、主要通貨に対し円の減価が進行しています。ドル円も、ここ数日で144円台を回復してきており、市場では政府・日銀によるドル売り・円買い介入への警戒も強まっています。ただ、輸入物価の大幅低下などで、昨年のような「悪い円安」の声はあまり聞かれず、よほど急激な円安とならない限り、円買い介入の可能性は低いように思われます。

 

ドル円相場については、時間の経過とともに緩やかなドル安・円高が進むという弊社の基本的な見方に変わりはありません。ただ、米国では昨年3月からの利上げで、インフレは最悪期を脱したものの、労働市場は堅調で、個人消費も底堅い状況です。そのため、米金融政策の見通しを幾分タカ派方向に修正し、各期末のドル円の予想着地水準もドル高・円安方向に修正しましたが、引き続き年度末にかけては緩やかなドル安・円高の動きを見込んでいます。

 

(2023年6月29日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『予想着地水準を「ドル高・円安方向」に修正…2023年後半の「ドル円相場」見通し【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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