2.特別縁故者の範囲
改正民法958条の2第1項では、「被相続人と生計を同じくしていた者」「被相続人の療養看護に努めた者」「その他被相続人と特別の縁故があった者」の3つの類型を挙げていますが、特別縁故者に該当するかどうかは裁判所の裁量に委ねられています。
(1)被相続人と生計を同じくしていた者
審判例では、被相続人と一緒に暮らしていた内縁の配偶者、未認知の非嫡出子で認知があれば相続できる立場であった者、事実上の養親子関係にある者、叔父(伯父)、叔母(伯母)、子の妻などが認められています。
生計を同一にしていた親族で唯一の法定相続人であった者が相続放棄をしたところ、清算後相続財産が残った場合、事情にもよりますが、当該放棄者を特別縁故者と認め、財産を分与した例があります(広島高岡山支決平成18年7月20日家月59巻2号132頁)。
(2)被相続人の療養看護に努めた者
被相続人と生計を同じくしていなくても被相続人の療養看護に努めた親族、隣人、知人等がこれに該当します。
療養看護の開始前から何らかの人間関係があった場合が多いですが(生計同一、親族関係、知人、友人、交際相手、隣人など療養看護を行うことを了解できる関係)、家政婦や看護師など療養看護を機に人間関係ができ、正当な報酬を得ていたとしても対価としての報酬以上に献身的に被相続人の療養看護に尽くしたと認められる場合は、特別な事情がある場合として、特別縁故者と認められる場合があります(神戸家審昭和51年4月24日判時822号17頁)。
(3)その他特別の縁故があった者
例示として挙げられた(1)(2)には該当しないものの、「生計同一者、療養看護者に準ずる程度に被相続人との間に具体的かつ現実的な交流があり、相続財産の全部又は一部をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうと匁られる程度に被相続人と密接な関係があつた者をいう」(東京家審昭和60年11月19日判タ575号56頁)とされています。
親族のほか全くの他人についても、認められた審判例があります(元教え子、元勤務先の代表取締役、友人など)。また、自然人のみならず、法人も特別縁故者となりえます(社会福祉法人、市などの地方公共団体、学校法人、医科大学、刑余者の更生保護事業を目的とする公益法人など)。
3.財産分与の手続
(1)特別縁故者からの相続財産分与の申立て、家庭裁判所の審判
特別縁故者に該当すると思われる者は、相続人捜索の公告の満了日から3か月以内に、相続財産の分与を家庭裁判所に申し立てることができます(改正民法958条の2)。
申立ては、相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所に対し、特別縁故関係となる事情を具体的に記載した申立書、それを裏付ける資料、戸籍関係書類等を提出します。
家庭裁判所は、縁故関係の有無や程度、縁故が濃厚か否か、分与の相当性、分与すべき財産を審理するため、職権で事実の調査及び必要があると認める証拠調べをし(家事事件手続法56条1項)、相続財産清算人の意見を聴いて(家事事件手続法205条)、申立人と被相続人の具体的な縁故関係、期間、生活状況、相続財産の種類、額等を総合的に審理した上で、分与をするか否か、分与するとした場合一部か全部か、金額等について判断することになります。
(2)共有持分について
相続財産の中に、共有持分がある場合、分与の対象になるかどうか従来見解が分かれ、①民法255条優先適用説、②民法958条の3(旧法)優先適用説がありましたが、現在では、判例は②の立場を採ることを明確にしました(最二小判平成元年11月24日民集43巻10号1220頁等)ので、特別縁故者がいる場合は、共有者よりも特別縁故者が優先されます。
杉原 杏璃 氏登壇!
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
(入場無料)今すぐ申し込む>>