(※写真はイメージです/PIXTA)

60歳の佐藤さんは、退職金は2,000万円受け取り、貯金は2,500万円あり、ゆとりある老後を送れると確信していました。しかし、たったの10年後、貯蓄は底をつき、あっという間に老後破産に陥ってしまったのです。いったいなぜなのでしょうか。本記事では、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が、佐藤さんの事例とともに老後のマネープランについて解説します。

貯蓄と退職金は十分…順風満帆な老後がスタートした60歳男性

現役時代、ボーナス150万円を含めて年収1,000万円だった佐藤さんは、退職金2,000万円を受け取りました。そのうち500万円を車の買い替えに使い、残りを貯蓄したところ、それまでの貯蓄2,500万円と合わせて、貯蓄額は4,000万円になりました。これだけの貯蓄があればゆとりある老後生活を送れると思った佐藤さんは、老後についてまったく不安を感じていませんでした。

 

佐藤さんの2人の子供は社会人となり独立しているため、夫婦2人と佐藤さんの母親との3人暮らしでした。83歳の母親は認知症を疑う行動をとり始めていたので、心配していたのですが、残念ながら症状は少しずつ悪化していました。

 

佐藤さんの妻は専業主婦で、子供2人が独立したあとは、習い事などをして楽しく過ごしていました。32歳の長男は、来年には結婚をすることになっており、結納の予定も決まっています。長女は29歳で独身ですが、家から出て自立した生活を送っており、結婚を意識している恋人もいるようです。

 

60歳での退職後、認知症を発症した母親の心配もありましたが、今後は夫婦2人で旅行もしたいと考え、少し贅沢をして羽を伸ばそうと高級旅館を予約し、2泊3日の温泉旅行に行くなど、思い描いたとおりの老後生活をスタートしました。

 

また、以前から気になっていた家の老朽化や、母親の介護のためにバリアフリーリフォームを行うことにしました。見積もりをしてみると約500万円ということで、貯蓄の4,000万円や、夫婦2人で20万円程度の年金から十分に支払えると判断し、改築を行うことになりました。

 

翌年には長男の結婚披露宴もあり、あまり貯蓄のなかった長男の結婚費用として150万円を出しました。このころには長女の結婚話も進んでいたようで、早ければ2年後には結婚することになりそうです。さらに母親の容態も悪化したことで、昼間は認知症の人も受け入れ可能なデイケアに通院してもらうことにしました。

62歳、もう少しで年金が受け取れるから問題なし!?

改築の費用500万円を支出して貯蓄が3,500万円となったほか、長男の結婚費用や母親の通院費などが重なった結果、このころから少しずつ貯蓄が減っていきました。しかし、これは一時的なものだと考え、生活水準を抑えることもなく生活していました。

 

62歳になった佐藤さんは、65歳の年金が受け取れるまでの3年後までの生活費として毎月25万円を取り崩しても、1,000万円程度の取り崩しという計算をしていました。それ以降は年金も受け取れるため、この時点でも家計についての心配はありませんでした。

 

思った以上にお金がかかる老後

このころには、母親の介護費用が食事代などを含めて日に1,500円程度、月に4万円もかからなかったので、月6万円の母親の年金で足りていました。しかし、通院費や日用品などで月6万円がかかったので、不足分の4万円を貯蓄から支出していました。

 

また、退職前の現役時代には年収が1,000万円あったことから、金額に糸目をつけずに欲しいものを買う習慣がしみ込んでいます。退職後もそんな生活を送っていたので、月25万円では足りずに、結局30万円ずつを取り崩すことになっていました。

 

長女の結婚の話も順調に進んで、予定どおり結婚をすることになり、結婚費用150万円を援助することにしました。佐藤さんは63歳となり、あと2年弱で年金がもらえるという意識もありました。

 

子供2人も家庭を持ったことで、佐藤さんもひと安心。母親を認知症でも受け入れてもらえるショートステイ施設へ預けて、3泊4日の旅行でまたまた羽を伸ばすことにしました。

 

 

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