(※写真はイメージです/PIXTA)

せっかく株式投資デビューしたのに、価格が上がってもあまりうれしくなく、むしろすぐ手放して落ち着きたい…。そんな初心者の人は多いようです。しかし、だからといって、すぐに切り上げてははもったいないというもの。長く賢く投資と向き合っていくには、知っておいてほしいことがあります。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

投資初心者「いいから、早く売ってしまいたい!」と思うワケ

投資初心者は、買った株が値上がりするとすぐに売りたくなり、利食い売り(利益確定売り)をしてしまう傾向があるようです。3割値上がりしたからと思い売却すると、その後も値上がりを続けて株価が2倍に…という経験をした人も多いのではないでしょうか。

 

「投資は怖い」と思っている人は、少し儲かっただけで満足してしまい、さっさと売って「投資をする以前の気楽な立場に戻りたい」と、気持ちが焦るのかもしれませんね。

 

もっとも、そのような感情は「脳の錯覚」が影響している、という研究もあります。経済学と心理学が共同研究しているような「行動経済学」という新しい学問分野があるのですが、それによると、眼の錯覚と同様に脳も錯覚するようにできているのだそうです。

 

ひとつは「儲かった喜びより損した悲しみの方が2倍大きい」というものです。「投資は怖い」と思ってしまうのは、「暴落するかもしれない」という恐怖だけではなく、この錯覚も関係していそうです。儲かっても少ししか嬉しくないのに、損をしたらその倍悲しいのですから「だったら、投資はしない方がよい」ということになりますから。

 

3割値上がりした時点で「さらに3割値上がりしたところで少ししか嬉しくないのに、元の値段まで下がればすごく悲しいのだから、売ってしまおう」というわけですね。

 

もうひとつの錯覚は「儲けや損が2倍になっても、嬉しさや悲しさは2倍にはならない」というものです。「儲けが2倍になっても嬉しさが2倍になるわけじゃないうえに、株価が下がって元に戻るだけですごく悲しい。ならば、売ってしまおう」というわけですね。

「自分は愚か者じゃない!」…心の叫びが損失を拡げる

一方で、「初心者は損切りが下手」といわれるように、株価が下がったときには、いつまでも売らずに塩漬けにする初心者が多いようです。これも脳の錯覚が一因なのでしょうね。このまま持っていて損が2倍になっても悲しさが2倍になるわけではないので、「株価が戻る方に賭けよう」というわけですね。

 

もっとも、「このまま持ち続けて3割上がってもちょっとしかうれしくないのに、3割下がると大いに悲しいから売ってしまおう」と考えないのは不思議ですね(笑)。買った値段をスタート地点と考えているからなのでしょうが、おそらく、次の要因も関係しているのだと筆者は考えています。

 

それは、「こんな株を買った自分は愚かだった」と思いたくない、ということです。「塩漬けにして株価が戻る→自分は愚かではなかった」ということになるので、それに賭けよう、というわけですね。

 

他人に愚かだと思われたくないから見栄を張る、というのであれば理解できますが、自分で自分に見栄を張るために合理的でない投資行動を選択する、というのはお勧めできませんね。

「いまから投資を始めるとして、その株をまた買いますか?」

「1,000円で買った株が800円に値下がりしたのですが、どうしたらいいですか?」

「500円で買った株が800円に値上がりしたですが、どうしたらいいですか?」

 

上記の質問をする初心者は多いようですが、筆者なら「あなたがいまから新しく投資をするとして、その株を買いますか?」と聞き返します。

 

「その株は800円から値上がりすると思いますか」と聞いてもいいのですが、「その株は値上がりしそうだが、ほかにもっと値上がりしそうな株がある」という場合には、その株を売って乗り換えるべきだからです。

 

要するに、買った値段のことは忘れ「これから自分が金持ちになるには何をしたらいいだろうか」という未来志向で投資判断をする、ということですね。

「損切り」と「狼狽売り」の区別とは?

「株価が一定以上下がったときには必ず売る」という自分なりのルールを作っておくのは、ひとつの選択肢でしょう。塩漬けにしている間に下がり続けて損が広がるのを防ぐ、ということですが、株価が大きく下がったときは頭に血が上り、冷静な判断が難しくなるので株を売って頭を冷やす、という効果も狙うわけです。

 

冷静になって、やはり同じ株を買い直すことになるかもしれませんが、その程度の手間と手数料は大損を避けるためのコストだと考えよう、というわけですね。もっとも、そんなコストを払わなくても、冷静でいる自信があればいいわけですが…。

 

一方で、初心者は株価が暴落するとこの世の終わりが来るような気がして「狼狽売り」をしてしまう、とも言われています。こちらも冷静になれ、という話なのですが、冷静になっても両者の区別はつけにくいですよね。

 

確率的には、市場全体が暴落したときは、狼狽売りをせずに様子を見る方がよいことが多く、個別銘柄が暴落したときには、塩漬けにせずに損切りをする方がよいことが多いといえそうです。

 

平均株価が下がったときは、市場全体が弱気になっている、景気が悪いなど、循環的な理由による場合が多いので、待っていれば戻る可能性がかなりありますが、一方で、個別銘柄が下がったときは、その会社に対する人々の期待がハゲてしまった、という場合が多いので、株価の戻りを期待しても、失望する結果になる可能性が高いからです。

 

本稿は以上ですが、投資は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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