パパ活女子、手渡しでもらい続けた「月10万円」の“お手当”がバレて…5年後、税務署に課された「追徴課税額」【税理士が解説】

パパ活女子、手渡しでもらい続けた「月10万円」の“お手当”がバレて…5年後、税務署に課された「追徴課税額」【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

パパ活で得た収入、いわゆる「お手当」は確定申告の対象です。手渡しでもらえば足がつかない、稼いでも年間110万円までなら非課税、などと考えてはいませんか? 確定申告の必要性をよりリアルに感じられるように、事例を設定して見ていきましょう。年収300万円の会社員が、5年間無申告で毎月10万円のお手当を得続けた場合、追徴課税はどれくらいになるのでしょうか。板山翔税理士がわかりやすく解説します。

「パパ活による収入」は確定申告の対象だが…認識が薄い人も

パパ活で副収入を得る、いわゆるパパ活女子が増えているようです。

 

その最大の要因は、マッチングアプリの普及により、アプリを入れるだけで誰でも手軽にパパ活を始められるようになったことでしょう。経済停滞、コロナ禍、物価高騰などの影響により、本業だけでは生活が苦しいという切実な事情も、パパ活女子が増える要因になっていると言われています。

 

パパ活自体は違法なものではありませんが、彼女たちは普通の会社員やパートタイマーであることが多く、パパ活で得た収入を確定申告しなければならない認識が薄いという問題点があります。

 

もし税務調査が入ったら、本来納税すべきであった所得税5~7年分に加えて、罰則となる税金が加算され、追徴課税額が多額になるケースもありえるからです。

 

仮に年収300万円の会社員Aさんが、手渡しで毎月10万円のお手当を受け取っていた場合、その追徴課税額はいくらになるのでしょうか? そもそも手渡しで受け取っているお手当てがどうやってバレるのでしょうか? 税理士として、この問題についてわかりやすく解説していきたいと思います。

そもそも、「手渡しのお手当」がどうやってバレるのか?

手渡しで受け取っているお手当が表に出ることはなさそうですが、税務署に気付かれる経路はいくつかあります。

 

たとえば、パパ活アプリや出会いカフェなどの運営会社に税務調査が入ったときに、利用者の情報も把握されるとか、税務署へタレコミが入るとか。

 

そのほか、収入が低いはずの女性が高額の不動産や証券を購入したため、疑問に思われて調べられるケースもあります。

 

いずれにせよ怪しまれる程度で、細かい収入金額までは把握できないかもしれませんが、いざ税務調査が始まれば、さまざまな角度からどのぐらいの収入があったのかを推測されてしまいます。

 

預金通帳の増減の状況を調べられたり、タンス預金やブランド品の有無をチェックされたり、アプリのトーク履歴の確認を求められたり…。

 

場合によっては、相手方への反面調査(聞き取り調査)が行われる可能性も否定できません。

 

副業程度の収入でどこまで本気で調査されるかはわかりませんが、現金収入だからといって簡単に隠しとおせるほど、税務調査は甘くありません。

どれくらい稼いだら確定申告しなければならないのか?

では最初から真面目に確定申告する場合、どのぐらい稼いだら確定申告しなければならないのでしょうか?

 

結論から先に言えば、給与所得がある会社員やパートタイマーであれば、パパ活で得た利益が年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。

 

利益なので収入から経費を引いた金額で判断することになりますが、パパ活で収入から引ける経費はそう多くはありません。

 

アプリの利用料、お茶代、交通費、プレゼント代などは確実に経費にできそうですが、プライベートでも使う被服費(衣服やアクセサリー、バッグなど身につけるもの)や化粧品代はほとんど経費にできないでしょうし、電話代も一部しか認められないでしょう(パパ活専用の被服や電話でもあれば別ですが)。

お手当=贈与だから「年間110万円までは非課税」、という誤解

「パパからもらっているお小遣いだから『贈与』。つまり年間110万円までは非課税」と考えている人もいるようですが、ほとんどのケースでこれは間違いです。

 

贈与は民法上、無償で財産を与える契約なので、たしかに無償でお小遣いのやりとりをした場合は贈与になります。しかし、パパ活はそもそも食事やデートの対価として金銭のやりとりをしているため、有償でサービスの提供をしていると考えるのが自然でしょう。

 

したがってパパ活の収入は贈与税ではなく、所得税の計算の対象となり、所得区分は事業所得か雑所得です。

 

事業所得か雑所得かのどちらに該当するかは、事業と呼べるような規模でパパ活を行っているか否かで変わりますが、いずれにせよ収入から経費を引いた所得(利益)に対して所得税が課税されることに変わりはありません。

 

事業所得であれば、青色申告をすれば青色申告特別控除最大65万円を受けられるなどのメリットがあります。ただし、申告期限までにきちんと確定申告をしないと、65万円の青色申告特別控除は受けられません。

無申告がバレた場合、追徴課税額はいくら?

補足説明が終わったところで本題に戻しますが、仮に年収300万円の会社員Aさんが、手渡しで毎月10万円(年間120万円)のお手当を受け取っていた場合、その追徴課税額はいくらになるのでしょうか?

 

追徴課税額は、増えた利益に対して課税される所得税、罰則として追加で納付しなければならない税金の2通りありますので、それぞれに分けて説明します。

 

■増える所得税

年間20万円の経費が認められたとすれば、残る利益は年間100万円(収入120万円-経費20万円)であり、この増えた事業所得(または雑所得)に対して所得税が課税されます。

 

所得税は所得が増えれば税率も5%~45%の範囲で上がっていく累進課税制度が採用されていますが、年収300万円程度であれば、事業所得100万円を加算してもおおむね税率5%のラインです。

 

つまり、Aさんの場合は増えた所得100万円に対して、所得税の税率5%をかけた5万円の支払いが必要になります。

 

①増える所得税…100万円×5%=5万円

 

なお、税務署ではなく役所が管轄している住民税(市府民税)についても、税務調査によって遅れて確定申告をすれば、後日追加で納付が必要になります。

 

住民税の税率は所得に関わらず一律10%ですので、増えた所得100万円の10%である10万円の支払いが必要になります。

 

■罰則となる税金

罰則となる税金は、申告をしていなかったことにより課される無申告加算税(または重加算税)や、納税が遅れたことにより課される延滞税などがあります。

 

無申告加算税は、増えた所得税の15%(所得税が50万円以下の場合)です。今回のケースで言えば、①の増えた所得税5万円の15%である7,500円です。

 

②無申告加算税…①5万円×15%=7,500円

 

なお、単に確定申告しなければならないことがわかっていなかっただけではなく、故意に収入を隠して脱税したとみなされれば、無申告加算税に代わって重加算税40%が課されることになります。

 

5万円の40%であれば2万円と金額が跳ね上がりますが、どこまでが単なるミスでどこからが故意の脱税なのかは判断が難しいので、どちらと判断されるかはケースバイケースです。

 

次に延滞税ですが、こちらは納付が遅れた年数に応じて年間3%弱かかる利息のような税金です。今回のケースで言えば、①の増えた所得税5万円の3%であれば年間1,500円程度ですが、5年納付が遅れたものであれば7,500円(1,500円×5年)と、納付が遅れるほど延滞税も大きくなってしまいます。

 

ただし、故意の脱税ではない場合は、延滞税は最大1年間分しか課さないという特例がありますので、重加算税が課されるようなケースでなければ、延滞税も1年分で済みます。

 

③延滞税…①5万円×3%弱×納付が遅れた年数(脱税でない場合は1年)

 

なお、税務調査される年数は通常は5年分が上限ですが、脱税とみなされた場合は7年分に延び、延滞税を1年分しか課さない特例も適用してもらえなくなりますので、その分延滞税も大きくなってしまいます。

 

■追徴課税額の総額はいくら?

脱税とはみなされずに、調査される年数が5年分とした場合、追徴課税額の総額はおおよそ次のとおりです。5年間ずっと年収300万円、パパ活で得た事業所得100万円として、かなり簡略化して計算しています。

 

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①増える所得税…5万円×5年=25万円

②無申告加算税…7,500円×5年=3万7,500円

③延滞税…年間1,500円×5年=7,500円

④合計…29万5,000円

 ※他に住民税10万円×5年などもかかります。

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追徴課税額を減らす方法は?

追徴課税額を減らす方法はシンプルで、できるだけ早く自ら確定申告することです。

 

税務調査を受ける前に自主的に期限後申告した場合は、無申告加算税が15%→5%に軽減されるだけでなく、脱税とみなされて重加算税が課されるリスク、7年分調査されるリスクがほとんどなくなるというメリットがあります。

 

もちろん延滞税の金額も、納付が早ければ早いほど少なくなります。

 

もっと言えば、毎年の確定申告期限までに青色申告をしていれば、青色申告特別控除最大65万円が受けられるため、もともとの所得税や住民税を大きく下げることも可能です。

 

確定申告は難しいので、ついつい放置してしまう気持ちも痛いほどわかりますが…。そのために税理士という制度が設けられていますので、困ったときは身近な税理士さんに相談してみましょう。

 

 

板山 翔

板山翔税理士事務所 代表、税理士

 

おそらく日本初の「オンライン専門の税理士事務所」の創設者。自社の事業を「税理士業」ではなく、「経営に必要な情報をオンラインで提供する事業」と捉え、経営戦略コンサルタントとしても活動している。従業員5名以下の小さな会社の経営者を中心に、「小さな会社だからこそできる差別化戦略」の立て方や、「短期間で売上アップするためのマーケティング戦略」、「長期的に資産を形成していくための財務戦略」などを教えている。

 

 

 

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