(※画像はイメージです/PIXTA)

先週の「タカ派FOMC」を受けて、米ドル/円は「1ドル140円」を明確に上抜けるなど、2022年10月に記録した「1ドル151円台」の円安が現実味を帯びてきました。こうしたなか、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は、日銀による「円安阻止」介入再開の可能性を指摘します。米ドル/円が151円台に向かう可能性と、日銀の今後の動きについて、吉田氏が予想します。

今週の注目点…日銀の「円安阻止」介入再開は?

米ドル/円が140円を大きく超えて米ドル高・円安が広がり出したこと、また前述のように円全面安が広がってきたことなどから、日本の通貨当局による円安阻止の為替介入が再開される可能性も一部で注目されているようです。そこで介入再開の可能性について改めて考えてみます。

 

経験的には、円安阻止の米ドル売り・円買い介入はいつ再開してもおかしくないでしょう。

 

140円を越えてきたことにより、米ドル/円は過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)を2割以上上回ってきましたが、1990年以降で同じように5年MAかい離率が±2割以上に拡大した5回のうち4回は介入が開始されました(図表6参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表6]米ドル/円の5年MAかい離率(1990年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

その意味では、さらに米ドル高・円安が広がるようなら、行き過ぎた円安をけん制する意味から為替介入が再開する可能性はあるでしょう。

 

そもそも、現在の米ドル高・円安は購買力平価との関係で見ると「異常」です。

 

日米の消費者物価で計算した購買力平価は足元で110円を少し下回った水準なので、140円以上なら消費者物価の購買力平価を約3割も上回るといった具合に、かつてなかったほど行き過ぎた米ドル高・円安と言えます(図表7参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表7]米ドル/円の日米消費者物価購買力平価からのかい離率(1973年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

これは、たとえば海外からの日本での消費がかつてなかったほど有利になっている一方で、日本からの海外での消費は逆にかつてなかったほど不利になっているといった意味になります。円安にはメリット、デメリットともにありますが、異常なほどのデメリットが生じている面もあるということです。

 

ただし、メリット、デメリットを総合した日本経済全体への円安の評価と言う意味では、最近の猛烈な株高などを見る限り、2022年のような「悪い円安」への不満は強くなさそうです。

 

たとえば、2022年9~10月に、日本の通貨当局は円安阻止介入を断続的に行いましたが、当時は円安を尻目に株価は下落傾向にありました。最近のように円安と株高が基本的に連動している状況とはかなり対照的だったと言えそうです(図表8参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表8]米ドル/円と日経平均(2022年8月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

以上のようななかでも円安阻止介入が再開するかは、今後の米ドル/円の行方を考える上でのひとつの焦点でしょう。

 

また、21、22日にパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言が予定されていることから、先週の「タカ派」FOMCを受けての発言に注目が集まりそうです。

 

以上を踏まえると、今週の米ドル/円は高値波乱含みで、139~144円を中心としたレンジでの展開を想定したいと思います。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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