今回は、タイと日本で異なる「ビジネス習慣」について見ていきます。※本連載は、雑誌やウェブなど幅広い媒体で執筆活動をしているタイ・東南アジア専門ライター・梅本昌男氏の著書、『タイとビジネスをするための鉄則55』(アルク)の中から一部を抜粋し、東南アジア随一の工業国タイの地で、円滑にビジネスを行うために欠かせない知識やヒントを紹介します。

呼び掛けの仕方で分かるビジネス上の「信頼関係」

Q.日々のビジネスシーンで、日本と異なるのはどんな点ですか?

 

A.書類の原本を日本よりも重視する一方、ビジネスマナーについては日本よりカジュアルな面もあります。

 

同じアジア圏で文化的に日本と似た面もあるタイですが、商習慣では意外なところで日本と異なる部分があるので、注意が必要です。

 

●名刺交換

名刺交換はミーティングの最初に行うのが一般的です。このとき自社メンバーの役職や役割を簡単に紹介しましょう。タイでは名刺は片手で渡すのが普通ですが、日本式に両手で渡しても構いません。差し出す名刺の向きも、前後どちら向きでも特に問題ありません。

 

●呼び掛け

タイでミスターやミズに当たる敬称は「クーン(Khun)」で男女とも同じです。ビジネスミーティング、特に初対面の場合は「クーン・○○」と呼べば間違いないでしょう また親しい相手とはファミリーネームではなく、ファーストネームまたはニックネームで呼び合うのが一般的。

 

ビジネス上の付き合いでも、親しくなってくると、「クーンはいらないから」と言われます。さらに「ピー(お兄さん・お姉さん)」「ノーン(弟・妹)」と呼び合う間柄になれれば、信頼関係が築けた証拠。

 

ビジネスでもあいさつは通常、ワイ(合掌)で始まります。本来、目下の人から先に、目上の人に向かってワイをします。私たち日本人(外国人)はタイ式のあいさつの形式を強く意識する必要はなく、ワイも握手も、相手に応じて返せば大丈夫です。

タイの仏暦が使用されるビジネスの正式文書

●紙の書類の重視

タイでは官公庁などがまだ原本主義をとっています。ですから、全ての書類を紙で用意する必要があります。会社法で関連書類は年間保管しておく必要がありますが、10年間取っておくのが一般的です。

 

大きな会社では莫大な量になるので、こういった書類を専門に預かる郊外の施設に保管し、顧客のリクエストに応じて必要な書類をオフィスに届けるサービスもあります。タイでは公式文書のサインに青いボールペンを使うのが一般的です。原本のサインごとコピーするケースがあるため、原本とコピーを役所側が見分けやすくするためと言われています。

 

●官公庁への申請手続き

官公庁に提出する書類はタイ語が基本です。会社登記やBOI(タイ投資委員会)認可などは申請システムが確立されているので、必要な書類がそろっていれば比較的スムーズに進みます。

 

ただ、書類に不備があった際、その都度、修正を要求される場合が少なくありません。全ての書類に目を通し終えてから修正個所を指摘するのではなく、担当官が一つ気づいたら修正、また気がついたら再修正という具合です。何度も役所へ出向くことになるので、ミスが少ない書類の作成を心がけましょう。

 

●仏教とビジネス

タイの正式文書には通常、タイの仏暦が使用されます。西暦に543を加えると仏暦になる(例 西暦2016年+543=仏暦2559年)ので、覚えておきましょう。また、タイでは新しいオフィスや工場の開所式、創立記念日などには僧侶を招いて祈祷をしてもらうのが一般的です。

 

オフィスの中や敷地には、サンプラプームと呼ばれる土地神の祠(ほこら)があります。寺院だけでなく、こういった祠もタイ人の熱心な祈りの対象で、その前を通るときには手を合わせるのが一般的です。

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    本連載は、2016年6月23日刊行の書籍『タイとビジネスをするための鉄則55』から抜粋したものです。その後の社会情勢等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

    タイとビジネスをするための 鉄則55

    タイとビジネスをするための 鉄則55

    梅本 昌男

    アルク

    積極的な外資誘致で、自動車などの産業集積が進み、東南アジア随一の工業国になってきたタイ。 東南アジアのほぼ中央に位置するため、この地域の統括拠点を置く企業も珍しくありません。日本企業の進出も多く、在住日本人数は…

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