一律ではない「恩典の内容と税免除の年数」
Q.タイ資本との合弁ではなく、独資で会社を立ち上げる場合のプロセスを教えてください。
A.独資の場合、BOIなどの認可を得て会社を設立するのが一般的です。
タイ側の資本を入れずに独資(単独資本)で事業をスタートさせる場合、通常はBOI(タイ投資委員会)の認可を取得します。BOIは首相を委員長として首相府が管轄する委員会で、1977年に公布された投資促進法に基づく組織です。
BOIの認可は企業ごとではなく、プロジェクト単位。最低投資金額は100万バーツ(約300万円/土地代、運転資金を除く)、環境に配慮をした計画立案などを行うこと、最新の生産方法と新しい機械を使うこと(海外から持ち込んだ中古機械は使用できない場合もあります)などが規定として盛り込まれています。委員会の認可を受けられれば、独資での事業開始を認められた上で、以下のような恩典を受けることができます。
・法人税の免除
・輸出のために使用する原材料の輸入関税の減免
・外国人への労働ビザ・労働許可書の便宜供与(取得の援助)
2015年初頭にBOIの制度が大きく改変され、進出地域によって恩典に差のあるゾーン制から、プロジェクト内容別の恩典制に変更になりました。その業種のタイ経済に対する重要性によって、恩典の内容と税免除の年数が変わります。以下、グループ別の恩典内容と各グループに属するプロジェクトの概要です。
・恩典内容と適用年数
グループAは、法人税と機械の輸入税の免除、輸出製品を作るための原材料の輸入税の免除、税金以外の恩典(外国人のビザ、労働許可等)を受けられます。グループAは法人税に関する恩典の期間の違いで4つに分かれます。
A1:8年間の投資限度額のない法人税の免除
A2:8年間の法人税の免除
A3:5年間の法人税の免除
A4:3年間の法人税の免除
グループBは輸出製品を作るための原材料の輸入税の免除、税金以外の恩典が同じで、機械の輸入税の免除について2つに分かれます。
B1:機械の輸入税の免除
B2:機械の輸入税の免除なし
認可を受けた後は、BOIの定めた義務を確実に遂行
プロジェクト内容は、7つのセクションとさらに細かい業種内容に分かれます。そして業種内容ごとに先述の恩典のグループが異なります。
例えば、「農業、農業製品の化学肥料、有機肥料、ナノコーティングされた有機肥料、生物農薬の製造(セクション1業種1)」は恩典A3、「鉱物探査(セクション2業種1)」は恩典B1、「スポーツ用品の製造(セクション3業種4)」は恩典B1といった具合です。
申請は①申請書と会社資料(英語可)の提出、②BOIの担当者との面接(英語)、③審査、④認可という流れになります。こうして認可を受けた後、大事なのはBOIの定めた義務を確実に遂行することです。プロジェクトの状況の報告(6カ月、12カ月、24カ月)や免税対象となる輸入機械や原材料のリスト作成などです。
このような義務を怠った企業には最悪の場合、認可の取り消しもあり得るので注意してください。タイ工業省の関連会社IEAT(タイ工業団地公社)も、BOIと同じタイ政府による外資誘致政策です。ビザ発給面など複数の恩典内容が重複しており、一方だけの申請で十分な場合もあります。BOIやIEATの申請は、コンサルティング会社の代行サービスを利用する手もあります。