今回は、タイでビジネスを進めるための「税制と労務」の基本知識について説明します。※本連載は、雑誌やウェブなど幅広い媒体で執筆活動をしているタイ・東南アジア専門ライター・梅本昌男氏の著書、『タイとビジネスをするための鉄則55』(アルク)の中から一部を抜粋し、東南アジア随一の工業国タイの地で、円滑にビジネスを行うために欠かせない知識やヒントを紹介します。

年間滞在日数が180日以上でタイ居住者と見なされる

Q.税制と労務について最低限知っておくといいポイントを教えてください。

 

A.税制は付加価値税を毎月申告するなど、日本と違う点が多々あります。

 

タイの税制と労務について簡単にご紹介します。最新の情報は、会計事務所や税理士などの専門家にご確認ください。

 

●法人所得税(Corporate Income Tax, CIT)

 

法人税の税率は原則30%ですが、現在、勅令によって20%になっています。この措置がいつまで続くかは未定です。また払込資本金が500万バーツ以下、かつ売上高が3000万バーツ以下の中小企業には0〜20%の累進課税が適用されます。申告は年2回、6カ月目の中間申告と年度末の確定申告になります。

 

中間申告の際に年間分の課税額を計算し、その半分を納税、確定申告後に残りを納めます。飲食代、ゴルフ代などのいわゆる交際費は、総売上高の0.3%または資本金の0.3%のうち、どちらか大きい方の金額までを損金として申告できます(上限は1000万バーツ)。申告する会社の役員の承認および領収書が必要です。

 

●付加価値税(Value Added Tax, VAT)

 

付加価値税(VAT)は原則10%ですが、こちらも7%にする措置が取られています。申告は毎月。タイのVATはインボイス方式を採用しています。タイで製品やサービスの取引をする際、提供側の企業は、インボイス(購買者名や納税者番号、税額などを記した正式な請求書)を購買側企業に発行します。

 

●個人所得税(Personal Income Tax)

 

現在の個人所得の課税率は0〜35%。企業は給与から源泉徴収を行う義務があり、毎月、歳入局に申告納税します。日本人の場合はタイでの年間滞在日数が180日以上で居住者と見なされます。租税条約に基づき、非居住者の日本での収入はタイで課税されず、居住者は課税対象になります。駐在員はタイで働いて得た収入の全てが課税対象。タイ法人からの給料に加えて、日本側で得た給料も課税対象です。

休日勤務手当ては基本給の2倍以上の支払いに!?

●源泉徴収税(Withholding Tax)

 

給与所得のほか、企業間取引にも課税されることがあります。サービス、配当や利子、賃貸料などが対象となります。相手が外国企業の場合、租税条約によって免除されることもあります。

 

●労働時間・残業手当て・就業規則など

 

労働時間は1日8時間、1週間48時間が上限。休日は週1日以上。残業手当ては、平日が基本給与の1.5倍以上で休日が同3倍、休日勤務手当ては2倍以上になります。解雇補償金は120日以上の勤務から支払い義務が発生し、勤続年数に応じて、例えば、10年以上の勤務であれば300日分の支払いが必要です。10人以上が勤務する企業は、タイ語で書かれた就業規則を労働省に届け出なければなりません。必須記載事項は、勤務日や勤務時間、休日、残業手当て、罰則、解雇など。タイの就業規則は改定に従業員の同意が必要です。

 

●社会保険

 

企業は以下の保障を労働者に対して提供する義務があります。①疾病給付、②出産給付、③障害給付、④死亡給付、⑤児童手当て、⑥老齢年金、⑦失業保険。会社設立時には、30日以内に社会保険事務所に加入申請をする必要があります。

本連載は、2016年6月23日刊行の書籍『タイとビジネスをするための鉄則55』から抜粋したものです。その後の社会情勢等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

タイとビジネスをするための 鉄則55

タイとビジネスをするための 鉄則55

梅本 昌男

アルク

積極的な外資誘致で、自動車などの産業集積が進み、東南アジア随一の工業国になってきたタイ。 東南アジアのほぼ中央に位置するため、この地域の統括拠点を置く企業も珍しくありません。日本企業の進出も多く、在住日本人数は…

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