積立投資をお勧めする理由1|少額でも投資を始められるから
「なぜ投資をしないのですか?」という質問に対して、「ある程度、まとまったお金ができたら投資を始めようと思っている」と答える人がいます。
ところが、このように答えた人で、お金が一定額貯まったところで投資を始める人は、実はほとんどいません。
確かに昔は、100万円程度の資金がないと株式投資を始められないというケースはありました。株式投資はお金持ちがやるものというイメージは、あながち間違ってはいなかったのです。
でも、今は株式投資でさえ1万円にも満たない金額でできる世の中になりました。ましてや投資信託に至っては、毎月100円から積立投資できる金融機関もあります。
この程度の少額資金で投資できるのですから、「まとまったお金ができたら投資をする」などといっているのは、単に投資をしたくないことの言い訳に過ぎないのです。
もちろん、少額資金で投資できるからといって、投資信託を1万円だけ購入して放置していても、全く資産形成はできません。少額投資は積立投資とセットにして初めて高い効果を得ることができるのです。
1万円で投資をするのであれば、1回こっきりではなく、毎月1万円ずつ積み立てていきます。そして、それを10年、20年、30年と続けることによって、より大きな資産が築かれていくのです。
ちょっと厳しいことをいうと、毎月1万円だけではよほど積立投資の期間を長くしないと、満足のいく資産形成はできません。
たとえば毎月1万円を20年間積み立て、それを年平均5%で運用できたとしても、20年後の資産額は411万円程度です。でも、これを40年間続ければ、資産額は1,526万円程度になります。
本気で資産形成をするならば、自分の年齢が上がって収入が増えた時には、その分だけ積み立てる金額を増やすのが理想です。
ただ、どのようなスタイルで資産形成をするにしても、まずは積立投資をスタートさせないことには何にもなりません。そのきっかけが毎月1万円の積立投資なのです。
◆お金を持っていないのは、皆、同じ
実際のところ、50代の人たちは、どのくらいの金融資産を持っていると思いますか? 「資産」ということでいえば不動産も含みますが、本記事では預貯金、株式、投資信託といった金融資産に限定して話を進めていきましょう。
これにはしっかりした統計があります。金融広報中央委員会が毎年公表している「家計の金融行動に関する世論調査」(2022年)によると、50代の平均的な金融資産保有額は1,684万円です(2人以上世帯)。
「え? そんなに持っているの?」と驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
でも、この数字はあくまでも平均値です。平均にはちょっとしたトラップがあります。大きな数字に引っ張られる特性があるのです。
たとえば、それぞれの金融資産保有額が1億円、100万円、80万円の3人がいるとしましょう。この3人の金融資産額の平均値がいくらになるのかというと、
(1億円+100万円+80万円)÷3=3,393万円
です。1億円もの金融資産を持っている人の金額に、平均値が引っ張られているのが明らかに分かります。金融資産保有額が100万円の人、80万円の人からすれば、「どこのお金持ちの話?」ということになります。つまり平均値はあまりあてにならないのです。
そこで使われるのが「中央値」です。データを大きさの順に並べた時、全体の中央に位置する数字のことです。
先ほどの例の1億円のように、突出した数字に引っ張られてしまうのを防ぎ、より実態に近い数字を把握するために用いられます。
この中央値で50代の金融資産額を見ると、810万円です。平均値の実に半分程度に過ぎません。この金額のほうが、50代の人たちの多くにとって実感に近いでしょう。
さらにいうと、これらの数字はあくまでも50代で金融資産を持っている人たちの平均値であり、中央値です。裏を返すと、金融資産を全く保有していない人たちの数字は、ここに含まれていません。
では、50代で金融資産を保有していない人はどのくらいいるのでしょうか? これも「家計の金融行動に関する世論調査」に出ています。実に24.4%の人たちが、50代で金融資産を保有していないのです。約4人に1人です。
これらの数字から察することができると思いますが、意外と皆、お金を持っていないのです。
同窓会に参加した時、周りにいる同級生のうち4人に1人はほとんど貯蓄を持っておらず、仮に持っていたとしても、多くの人は810万円程度の金融資産しか保有していないのが実情です。
だから、「今さら資産形成を始めても手遅れだ」などといって、いじける必要は一切ありません。50代になった人の多くは、70歳に向けて、「よーい、どん!」でこれから長期投資を始めるのです。決してあなた一人ではありません。
そう考えると、少し気が楽になるのではないでしょうか。