前回は、アパートの入居率を高める「広告宣伝費」の活用法を紹介しました。今回は、「家賃を下げて」アパート経営の利益を最大化する方法について説明します。

リフォーム工事によって逆に収益が低下することも・・・

家賃を下げると聞いて「えっ」と思った方も多いのではないでしょうか。しかし、これも費用対効果の重要な考え方の一つです。

 

特にリフォームをしてもその効果が出づらい物件では、家賃を下げることで効果が大きく出ます。常に利回り(費用対効果)を考えましょう。

 

例えば、リフォームをして募集をかけた場合の賃料が10万円で、工事費用は50万円だったとします。リフォームをかけずに募集をした場合は、賃料が9万5000円でリフォームをした場合との差額は5000円です。

 

この場合、年間賃料が5000円×12カ月=6万円のアップとなりますので、「リフォーム利回り」は6万円(賃料アップ分)÷50万円(リフォーム費用)で、12%となります。

 

しかし、この工事費用が100万円かかる場合はどうでしょう。このリフォーム工事の「利回り」は半分の6%となってしまいます。この際の判断基準として、物件購入時の利回りと同じか、または上回っているかという点に注目してください。

 

仮に物件を12%の利回りで購入したのであれば、このリフォーム工事によって収益性が低下してしまうという判断になります。この場合には、工事を行わず賃料を5000円下げたほうが収益性の点からはメリットがあることになります。

 

50万円以下の工事費用であれば、「利回り」は12%以上となりますので、物件購入時の利回りと同水準以上となりますから、工事を実行することで収益性が維持・向上できると言えます。

 

このように、「利回り」という基準で考えれば、賃料を下げるのかリフォーム工事を行うのかという基準が明確になり、素早く的確な判断を下せるようになるのです。

入居者からの賃料減額依頼も「利回り」基準で判断

また、近頃筆者の会社の管理で、契約年数の長い入居者から現在の募集賃料との差額を理由に、賃料減額交渉が入るというケースが出てきています。これはインターネットの普及により、賃貸情報の検索が容易になったことが原因と予想されます。

 

以前であれば「嫌だったら出ていってください」で済んでいましたが、一入居者当たりの募集コストやリフォーム、原状回復工事の費用を考えると、そうも言っていられない事情があります。

 

そのような交渉が入った場合にも、入居者からの希望賃料値下げ幅と、退去後のリフォーム費用、募集コストを比較することで、適切な対応を取ることができます。

 

ただし、売却を想定している場合、賃料総額が低下してしまえば売却価格の下落につながりますので注意が必要です。売却も含めた利益の最大化という視点から判断することが重要です。

 

また本連載で述べてきた通り、賃料交渉や退去などはないことが一番です。日頃から入居者の満足度を高める努力(入居者への各種提案、物件の清掃の徹底、素早いクレーム対応)など、「攻めの経営」を行うことで、賃料値下げ交渉や、退去の確率を低下させることができます。

本連載は、2013年7月2日刊行の書籍『改訂版 空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資・経営(管理運営)の成功を保証するものではなく、本連載を参考にしたアパート事業は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本連載の内容に基づいて経営した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。なお、本連載に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

空室率40%時代を生き抜く!  「利益最大化」を実現する アパート経営の方程式

空室率40%時代を生き抜く! 「利益最大化」を実現する アパート経営の方程式

大谷 義武 太田 大作

幻冬舎メディアコンサルティング

アパート経営は今までと同じやり方では利益が出ない時代へと状況が大きく変わってきています。歴史上初めての大きな転換期を迎えていると言っても過言ではありません。だからこそ今のうちに、アパート経営を見直し、しっかりと…

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