韓国の店舗が成功した「2つのポイント」
世界中で求められはじめている「コンファタビリティ」を持つコインランドリー。実はこのタイプのコインランドリーがもっとも進んでいるのは、韓国です。同国の代表的な例を紹介しましょう。
所在地:ガンナム(ソウル特別市江南区)
面積:50㎡(約15坪)
設置機器:洗濯機5台、乾燥機5台
店舗デザイン:ヴィンテージ・スタイル
月額売上げ:1万USドル(2015年9月現在約120万円)
この店舗の成功のポイントは、「ハイセンスで高級感のあるデザイン」と「至れり尽くせりの併設サービス」の2点です。それゆえ今までコインランドリーに対して見向きもしなかった顧客層をヘビーユーザーとすることができたのです。
韓国には、以前から少数ながらコインランドリーはありました。しかし、そのほとんどの店舗が、かなり荒廃した雰囲気。昔から日本にあった銭湯の横にある「暗い」「狭い」「汚い」のさらに上を行くといえば想像できるでしょうか。
そんな店舗ばかりだった理由の一つに、韓国の気候があります。韓国は日本よりも梅雨がかなり短く、夏は湿気が少ない。しかも冬は家の隅々まで暖める暖房装置「オンドル」が普及しているので、部屋干ししてもよく乾く環境です。そのためコインランドリーのニーズが高くなかったのです。
ところがここ数年で気候が変化してきました。地球温暖化の影響で、梅雨が長引き夏はジメジメしてきたのです。そこでこの店舗のオーナーは、コインランドリー経営を検討しはじめました。それもユーザーが行列して行きたくなるような新しいタイプの店舗です。
まずは、コインランドリー先進国であるアメリカ、そしてお隣の日本へ視察に行きました。両国ともきれいで機能的なお店ばかり。非常に使いやすそうだったといいます。しかし、同時に感じたのが「味気ない」。わざわざお金を払いに行く場所なのに、少しも楽しそうな空間には見えなかったのです。
これでは洗濯という面倒な仕事を行う場所、というイメージが拭えません。オーナーは、どうすれば楽しい場所として受け入れられるかコンセプトを考えました。それが「wash&enjoy」です。これは「洗濯を楽しむ」という意味で、コインランドリーを利用することで面倒な家事から解放されましょう、という願いがこもっています。
さらに出店場所をガンナムに定めました。ガンナムは日本でいえば六本木や表参道。比較的裕福で流行に敏感な人が住む街です。最近20~30年で急速に発展したので、住民は20代、30代が中心です。この街に住む世帯は、共働きが多く、とにかく忙しい人が多いのが特徴です。時間を短縮できるなら、多少の出費はいとわないという人ばかり。コインランドリーのニーズは高いはずです。
集客のための「多種多様な工夫」とは?
「洗濯を楽しむ」というコンセプト、そしてガンナムという「プレミアム感」が好まれる土地柄。オーナーはこの2つを念頭に次のような店舗をオープンさせました。
ハイセンスな店舗デザイン
シンプルでありながら、木目やレンガなど自然素材を多用するといった落ち着いた雰囲気を演出しています。
プロのデザイナーが作成したポスターやチラシをディスプレイ
素人がパワーポイントなどで作成したポスターやチラシを店内にディスプレイすると、どうしても安っぽいイメージになってしまいます。ガンナムは高級住宅地。目の肥えた人が多いエリアなので、安っぽいイメージのお店にはリピートしてくれません。
カフェコーナー
有料で本格的なコーヒーを楽しむことも可能。そのためだけに来る人もいるそうです。
ビデオ上映
店内では常に映画やミュージックビデオが上映されています。そのほかにもまるで映画の予告編のようなお店のプロモーションビデオも流しています。
wi-fi設備
店内は常時wi-fiが使い放題。思いきりネットサーフィンを楽しむことができます。
このほかにも雑誌や携帯・スマホの充電器、伝言板など集客するための多種多様な工夫が講じられています。ここまで「コンファタビリティ」を徹底しているので、従来の作業場という印象は微塵もありません。
今までのコインランドリーのイメージを180度覆した好例といえるでしょう。