海外ではカフェ、エステ、日焼けサロンと併設する例も
コインランドリーは、「楽しめる場所」「人々とつながれる場所」としての役割を担うようになってきました。その方法の一つとして、欧米を中心に他業種との併設店が増えています。これは、建物が隣接しているというタイプの併設ではありません。同一建物内に、まったく違う業種の店舗が入っているという形式です。
海外で実際に展開している併設業種には次のような例があります。
・カフェ
・レストラン
・エステ
・日焼けサロン
・雑貨店
このような店舗を併設していると、退屈な待ち時間が楽しいひと時に変化します。また、併設店を目的に来店するユーザーもいるので「こんなところにコインランドリーがあったんだ」と認知度アップにもつながります。
これは併設店にとっても同じことがいえます。また、賃料を案分することもできるので、相乗効果は大きいといえるでしょう。このタイプの併設は、別々のオーナーでも同じオーナーでも可能です。別々のオーナーなら他業種経営のノウハウや資格は必要ありません。知り合いなどで開店を検討している人に声をかけてみる、といった方法で話を進めればいいいでしょう。
同じオーナーなら、たとえばカフェの場合、調理師免許が必要と思う人がいるかもしれません。しかし、その必要はなく、比較的簡単な手続きでオープンが可能です。カフェを開店させるのに必要な資格は、食品衛生責任者です。
飲食店や食品販売店では、この資格者を必ず1人置くことが定められています。資格は、各地域で講習と試験を受けることで取得することができます。費用は1万円程度。試験は受講していればほとんど合格できます。そのほかの資格には防火管理者がありますが、これは店内の収容人数が30人を超える場合に必要な資格なので、併設というより本格的な店舗をオープンさせる場合に取得すればいいでしょう。
同一店舗内の併設店は、日本においてもだんだんと増えてきました。たとえば2015年1月に私たちがオープンをサポートした九州のあるお店では、オーナーの娘さんである常駐スタッフが空きスペースでカフェをオープンさせようとしています。すでに食品衛生責任者資格を取得して計画は着々と進行中。オーナーとしては、将来このお店を娘さんに譲りたいと思っているので非常に楽しみにしていました。
また、同店はエステ店ともつながっています。こちらは奥さんが運営。もともと別の場所で賃料9万円を支払って営業していました。すでに固定客がいて、そのほとんどがコインランドリーのメインターゲットである主婦。しかも賃料が大幅に下がったので、家族全員が喜んでいます。
「消費者目線のコンファタビリティ意識」の重要性
これまで見てきたようなコインランドリーのマーケティング戦略は、今まで聞いたことのないものばかりだったかもしれません。特に海外の例に関しては、日本市場にそのまま当てはめられないと考える人もいるでしょう。
しかし、そんなことはありません。日本ユーザーに受けている店は、海外の流行店に通じるものがあるのです。それは、デザインや併設施設などの本連載で見てきたような、新たなコインランドリー店の姿であり、「顧客目線のコンファタビリティ意識」に基づいたものです。
今後コインランドリー市場は競争が激化していきます。差別化を図るために、いろいろなアイデアや工夫が必要になるでしょう。そのヒントが海外店にはあふれているのです。そして、なによりコインランドリー経営には、店をつくり上げていく楽しみがあります。やればやるだけ儲かる醍醐味があります。
これからのコインランドリー経営に、マーケティング戦略は必須です。とはいえ、特別な専門知識や経験は必要ありません。なによりオーナー自身が消費者目線に立つことが重要。
「こうなれば便利だな」「楽しいな」というちょっとしたアイデアを積み重ねていくことで成功に近づいていくのです。