今回は、自分の死後に遺産を寄付する方法について説明します。※本連載は、行政書士・尾久陽子氏の著書『定年直前から死んだあとまで。お金の手続きがすべてわかる本』(主婦と生活社)の中から一部を抜粋し、元気なうちに準備しておきたい「自分の死後」の手続きについて解説していきます。

遺産を寄付する3つの方法

自分の死後、財産を寄付するには3つの方法があります。下記の②と③の場合、寄付をするかどうかは相続人(子どもなど)の考え次第になるので、自発的に確実に寄付をしたいときは、①の遺言書に明記することをおすすめします。

 

遺言による寄付の注意事項

●遺言執行者を指定して遺言に書いておく

寄付を確実に実現させるには複雑な手続きが必要です。遺言に信頼できる人を「遺言執行者」として指定し、記載しておきましょう。

 

●「全財産を寄付」というわけにはいかない

法律で定められた相続人を法定相続人といいますが、法定相続人には「遺留分」という最低限保障された権利があります。たとえば「家に寄りつかない子どもには財産を残したくない」「全財産を○○に寄付をし、カンボジアで学校をつくる資金にしてほしい」と考えて、そう遺言に書いたとしても、子どもの相続財産をゼロにすることはできません。

 

相続人である子の遺留分の割合は、法定相続割合の2分の1と法的に決まっており、遺留分を侵害する内容の遺言を残すと、スムーズに寄付が実現できない可能性があります。それぞれの相続人の遺留分の割合を調べ、遺留分に配慮した遺言を作成しましょう。

 

●寄付の受け入れ先にも確認する

土地や建物などはそのままの状態では寄付として受け入れられないことが通常です。その場合は遺言執行者が現金化し、必要な税金や諸費用を差し引いた金額を寄付することになりますが、遺言に正確に明記しておく必要があります。寄付をしたいと思ったら、あらかじめ受け入れ先に相談しましょう。

 

〈遺産の寄付を受け付けている団体の例〉
日本ユニセフ協会、中央共同募金会(赤い羽根共同募金)、日本赤十字社、日本財団、あしなが育英会、国境なき医師団、など

 

【図表】預金を換金して日本赤十字社に寄付する場合の遺言例

定年直前から死んだ後まで お金の手続きがすべてわかる本

定年直前から死んだ後まで お金の手続きがすべてわかる本

尾久 陽子

主婦と生活社

定年目前のあなたに贈る、これからのお金の手続きを流れに沿ってまとめた60歳からのマネーガイドブックです。親からの贈与や相続、自分の死後に関することまで、退職後の半生に関わる「お金」の手続きをまとめてご紹介します。…

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