「公正証書遺言」を作成するメリットとは?
「自筆証書遺言」はいつでもどこでも、費用をかけずに自分で作成できるのがメリットですが、記載内容の不備により無効になってしまったり、遺言書の偽造などが疑われ、相続の争いの種をまいてしまうことがあります。また、遺言書そのものが発見されないことも心配です。
一方、「公正証書遺言」は費用がかかりますが、公証役場という公的な場で、法律の専門家である公証人によって公文書が作成されるため、後日無効になりにくく、確実に遺言が実現できます。
特に相続財産に不動産があったり、相続でもめることが予想されるなど確実性を求めたいときは、積極的に作成することをおすすめします。
遺言書案の作成を「専門家に依頼」することも可能
【公正証書遺言を作成する流れ】
①事前予約……公証役場に電話をして、相談日時を予約します。
②相談……必要書類を持参して、公証人に遺言書の内容を相談します。
③原案の作成……公証人が公正証書遺言の原案を作成します。原案は、郵送、ファックス、メールなど希望の方法で送ってくれます。内容を確認したら、公正証書遺言の作成日時を予約します。手数料がいくらかかるかこの時点で確認しておきましょう。
④公正証書遺言の作成……予約日時に証人2人とともに公証役場に出向きます。公証人から改めて遺言内容の確認があり、遺言書を読み合わせします。内容を確認したら、遺言者と証人それぞれが、遺言書の原本に署名・押印します。印鑑登録証明書と実印を忘れずに持参しましょう。
病気などで公証役場に出向くことが難しいときは、公証人に自宅や病院まで出張してもらい、遺言を作成することもできます。公正証書遺言の手数料は現金で支払います。料金は、遺言に記載する財産が500万円を超え1000万円以下の場合は1万7000円+遺言加算1万1000円+遺言書の枚数に応じた手数料加算などで、驚くような高額なものではありません。手数料は相続財産額などによって異なるので、公証役場に問い合わせましょう。
⑤遺言書の保管……完成した公正証書遺言は、原本・正本・謄本の3部が作成され、原本は公証役場が保管します。万が一、遺言書を紛失した場合も、全国の公証役場で遺言を検索することができ、謄本を再発行してもらうことができます。
〈公正証書遺言作成の必要書類〉
●遺言者本人の印鑑登録証明書(発行後3カ月以内のもの)
●本人と相続人の名前が記載されている戸籍謄本
●相続人以外の人に遺贈する場合はその住民票
●不動産登記簿謄本と固定資産評価証明書(遺言の内容に土地・建物がある場合)
※不動産登記簿謄本は最寄りの法務局、固定資産評価証明書は都税事務所または市区町村役場の固定資産税課で取得できる。
●相続させたい財産の情報がわかるもの(預金通帳のコピーなど)
●遺言の証人2人の住民票 など
公正証書遺言が完成するまでには、公証人との打ち合わせが必要ですが、これを弁護士などの専門家に依頼したうえで、公正証書遺言作成時には証人になってもらうこともできます。
なお、「秘密証書遺言」は遺言者が内容を知られたくない場合のものですが、実際にはほとんど使われていないのが現状です。