今回は、「死後事務委任契約」の締結に必要な手続きなどを見ていきます。※本連載は、行政書士・尾久陽子氏の著書『定年直前から死んだあとまで。お金の手続きがすべてわかる本』(主婦と生活社)の中から一部を抜粋し、元気なうちに準備しておきたい「自分の死後」の手続きについて解説していきます。

「死後事務委任契約」は公証役場でも作成可能

「死後事務委任契約」は私的な契約であり、契約書の形式は問いません。

 

「死後事務委任契約」を公正証書にする流れ


①事前予約……公証役場に電話連絡をし、相談日時を予約します。

 

②相談……死後事務を委任する人と一緒に、必要書類を持参し、公証役場に出
向きます。公正証書を作成する公証人に、契約書に記載する内容を相談します。

 

③原案の作成……公証人が契約書の原案を作成するので、内容を確認し、公正
証書を作成する日取りを予約します。

 

④公正証書の作成……予約日に死後事務を委任する人と一緒に公証役場に出向
き、公証人と面談します。公証人が作成した「死後事務委任契約公正証書」の内
容を改めて確認し、その内容でよければ署名・押印します。公証役場に支払う
死後事務委任契約公正証書の作成手数料は、1万1000円+正本謄本代3000円程
度で、合計1万4000円程度です。

 

病気など自分で公証役場に行くことができない人もいるでしょう。その場合は公正証書を作成する①~④までの流れを弁護士や行政書士などの専門家に依頼することもできます。この場合は、専門家に対して契約書作成費用を別途支払います。

 

〈死後事務委任契約の必要書類〉
本人と死後事務を受任する人それぞれが、A~Cのいずれかを持参します。
A 印鑑登録証明書(3カ月以内)と実印
B 自動車運転免許証などの身分証明書と認印
C 住民基本台帳カード(顔写真付き)と認印

「エンディングノート」の作成からスタートする手も

いくら、「立つ鳥跡を濁さず」を実行したいと思っても、死後事務委任契約の内容は多岐にわたります。主なものだけでも、

 

●医療費の支払い
●家賃・地代・管理費などの支払いと敷金・保証金などの支払い
●老人ホームなどの施設利用料の支払いと入居一時金など返還金の受領
●お世話になった人への連絡
●通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務
●行政官庁などへの諸届け

 

などがあり、本当に誰が自分の死後の始末をしてくれるのか、支払いや書類の届け出は誰に頼んだらいいのか…家族や親類、友人の顔を思い浮かべながら、迷ったり、悩んだりするのは仕方のないところです。

 

そこで、「終活」の初めの一歩として、自分が元気なうちに、自治体やNPOが無料で配布しているエンディングノートを利用して、自分の気持ちを書くことに挑戦です。

 

エンディングノートとは、人生の終末期に迎える死に備えて、自分の希望を書き留めておくノートで、自分に起こり得る万が一の事態に備えて、治療や介護、葬儀などについての自分の希望や、大切な人へメッセージを残すこともできます。

 

残された家族の負担を減らすこともできるでしょう。ただし、エンディングノートには書いた本人の意思が記されていますが、遺言のような法的効力はありません。

 

エンディングノートの死後事務に関わる部分を公的な証書に作成し直し、必ず実行されるのが「死後事務委任契約」と考えましょう。

定年直前から死んだ後まで お金の手続きがすべてわかる本

定年直前から死んだ後まで お金の手続きがすべてわかる本

尾久 陽子

主婦と生活社

定年目前のあなたに贈る、これからのお金の手続きを流れに沿ってまとめた60歳からのマネーガイドブックです。親からの贈与や相続、自分の死後に関することまで、退職後の半生に関わる「お金」の手続きをまとめてご紹介します。…

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