(※写真はイメージです/PIXTA)

株式投資には、株価が暴落して損をするリスクがあります。それを恐れて投資をしないという人も多いのですが、投信の積立をすれば大損するリスクが軽減されると知ったなら、投資を怖がる気持ちが和らぐかもしれません。メガバンク出身で、投資経験の豊富な経済評論家・塚崎公義氏が初心者向けに解説します。

投信の積立が「リスクを軽減」

期待値がプラスであること(確率的には儲かる可能性が高いこと)、投信の積立が大損のリスクを軽減すること、預金はインフレに弱いリスク資産だが株式はインフレに強いこと。

 

このような「株式の長期投資の特徴」を総合的に考えたら、老後資産の一部を株式投信の積立で持ちたいと考える人は多いのではないでしょうか。少なくとも筆者はそれを勧めています。

 

投信の積立投資が大損のリスクを軽減してくれるのは「銘柄分散」と「時間分散」ができるからです。初心者でも簡単にできるので、ぜひ前向きに検討してみましょう。

 

「投信(投資信託)」とは、プロが大勢の投資家から小口の資金を集めて数多くの銘柄の株を買い、投資の成果をそのまま(手数料を差し引いて)投資家に返す、というものです。

 

つまり、投資信託を買うことによって、零細な投資家でも多くの銘柄の株式を少しずつ買ったのと同じ効果が得られるというわけです。それにより「せっかく買った銘柄が、運悪く暴落してしまった…」といった悲しい目に遭うリスクが下がります。多くの銘柄のなかに暴落したものがあっても、ほかの銘柄が暴落していなければ、被害は限定的だからです。銘柄分散の効果ですね。

 

もうひとつ、時間分散も重要です。大量の投資信託を一度に買ってしまうと「運が悪いことに、その日が株価の高いときだった」といった目に遭う可能性があるからです。時間をかけて少しずつ投資信託を買っていけば、高いときも安いときも買うことになるので、大損をするリスクは格段に減るということですね。

 

大儲けを狙うなら、ひとつの銘柄を一気に大量に買うのがよいのでしょうが、それでは逆に、大損するリスクも抱えてしまいます。惨めな老後を避けるための老後資金の形成は、安全運転を心がけたいでしょうから、銘柄分散と時間分散によって「大儲けも大損もしない」ことが重要だと思います。

 

インデックス投信のメリットについては、拙稿『「株の暴落」何度も経験したが…経済評論家「投資初心者には〈インデックス投信の積み立て投資〉がお勧め」と語るワケ』を併せてご参照いただければ幸いです。

高いときには休み、安いときには多く買う

時間分散の最も簡単な方法は、毎月一定額の積立投資をすることですが、本稿では少し工夫を加えた方法をご紹介しましょう。それは「割高なときには買わずに休み、割安なときには多く買う」ということですね。

 

割高か割安かの判断は、たとえば「平均株価のPERが過去10年の平均より高いか低いか」でよいでしょう。平均より2割以上高ければ買わずに休み、2割以上低ければ2倍買う、といったルールを自分で設ければいいわけです。

 

もっとも、過去10年にリーマン・ショックが含まれていたりすると、常にPERが割高だという計算結果になってまったく買えませんし、過去10年にバブル期が含まれていたりすると、常にPERが割安だという計算結果になって毎月2倍買わなければならなくなってしまいます。

 

そうしたことを避けるためには、残高の目標を設定する、という選択肢も要検討です。

資産残高の目標額を設定する

30年後に360万円の株式投信を保有していることを目標として、毎月目標残高を1万円ずつ増やしていきましょう。株価が変動しなければ、毎月1万円ずつ投資をすればいいわけですね。

 

株価が上がると、残高が目標を上回るので、その月は買わなくてもいいでしょう。たとえば1年後の残高が15万円になっていたら、買わなくても目標達成に支障は無さそうだからです。

 

じつは、買わない理由がもうひとつあるのです。それは、残高が目標を上回っているということは、過去1年の平均よりもいまの方が株価が高いということを意味しているわけです。それなら、割高である可能性が高いから買わずに休むというのが合理的ですね。

 

あるいは、目標を超えている3万円分は売って(解約して)しまってもよいかもしれません。売ってしまっても目標達成に支障はなさそうですし、割高のときに売れば得ですから。

 

反対に、目標残高に達していない場合には株価が安いわけですから、多く買いましょう。2倍買うというのでもいいですし、目標残高に達するまで買う、というのでもいいでしょう。そこは、自分なりのルールの決め方ですから。

 

こうした作業を毎月繰り返すことによって、高いときには買わず、場合によっては売る、安いときには多く買う、ということが自然にできるわけですね。

休んだときも、使ってしまってはダメ!

高いときには買わない(もしくは売る)ということは、その月は生活費に余裕があるから贅沢ができる、ということになりますが、そこは我慢して別口座でしっかり貯めましょう。そうしないと、安いときに多く買わなければならなくなった際、生活費を切り詰めなくてはならないからです。

 

高いときに買わずにすんだ分は貯めておき、安くなって多く買うときに蓄えを使うことにすれば、生活水準は一定のままで暮らせることになりますから。

老後の取り崩しも資産残高の目標額で

現役時代に貯める場合と同様に老後の取り崩しも目標残高を決めましょう。30年間で残高がゼロになるように、毎月1万円ずつ目標残高を減らしていくのです。

 

株価が高ければ、目標残高を上回っているでしょうから、多めに売りましょう。その分は、退職金を取り崩して生活費に用いる必要が無くなるわけですね。

 

反対に、株価が安いときには目標残高を下回っているでしょうから売らないでいいでしょう。その月は、退職金を少し多く取り崩して生活費に使えばいいわけですから。

 

そうすることによって、老後も高いときには多く売り、安いときには売らない、ということが自然にできるというわけですね。

 

本稿は以上ですが、投資は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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