増加の一途をたどる、ニッポンの「おひとり様」
2020年に行われた国勢調査によれば、男性の生涯未婚率は28.25%、女性の生涯未婚率は17.25%だった。ここでいう「生涯未婚率」とは、50歳になった時点で一度も結婚したことがない人の割合を指す。数字から、男性の4人に1人以上が、女性の6人に1人以上が「生涯独身」だということになる。
50歳以降での初婚というケースもあるだろうが、それ自体非常に稀であるため、無視しても差し支えないと考えられることから、この数字は限りなく「生涯未婚に近い数値」だといえるだろう。
どのような理由で「おひとり様」なのかは、各個人それぞれ事情があるだろうが、老後生活への懸念は、頼る家族がいないぶん、大きいのではないだろうか。そこで考えるのが、老後を不安なく送るための資産額だ。どの程度お金があれば、生きていけるのだろうか?
65歳以上単身高齢者、年金だけで暮らせない人が多数
結論からいうと、月々15万円を工面できれば、平均的な生活はできそうだ。論拠は、総務省の『家計調査 家計収支編』(2022年平均)で、それによれば、65歳以上単身高齢者の消費支出は14万9,208円だという。
◆単身高齢者の1ヵ月の生活費
消費支出:149,208円(148,918円 / 148,971円)
(内訳)
食料:38,729円(40,938円 / 37,542円)
住居:13,530円(14,242円 / 13,141円)
光熱・水道:15,014円(14,748円 / 15,143円)
家具・家事用品:6,284円(4,631円 / 7,119円)
被服及び履物:3,632円(2,146円 / 4,388円)
保健医療:8,358円(8,124円 / 8,447円)
交通・通信:15,511円(19,409円 / 13,423円)
教養娯楽:15,501円(16,287円 / 15,041円)
その他の消費支出:32,648円(28,393円 / 34,727円)
出所:総務省『家計調査 家計収支編』(2022年平均)より
※数値は左より、単身65歳以上(単身男性65歳以上/単身女性65歳以上)
なお、厚生労働省によると、厚生年金受給者の平均年金受取額は、65歳以上男性で17万円、女性で10万円程度となっている。そこから保険料等が引かれることを考えると、元会社員・公務員の男性なら月々4万円程度、女性なら月10万円程度、また国民年金受給者なら月12万円程度を、貯蓄から補填していくことになる。
一方、「預貯金のない単身高齢者」も少なくなく…
しかしながら、不安な調査結果もある。金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和3年』によると、「金融資産※を保有していない」と回答したおひとり様の割合は、60代で28.8%、70代で25.1%。ここでいう「金融資産」は「運用や将来に備えて蓄えている部分」。つまり、経済的に余裕のないおひとり様高齢者は4人に1人以上となる。
※ 本調査では「定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用のため、または将来に備えて蓄えている部分とする。ただし、商・工業や農・林・漁業等の事業のために保有している 金融資産や、土地・住宅・貴金属等の実物資産、現金、預貯金で日常的な出し入れ・引落しに備えてい る部分は除く」としている。
なお、「金融資産あり」と回答したおひとり様高齢者の「金融資産保有額」は、60代の平均が2,645万円、中央値が1,180万円。70代で平均が2,396万円、中央値が1,380万円だった。これだけ見れば問題はなさそうだが、しかし、「金融資産あり」といいつつ「保有額300万円未満」の層も、60代で21.1%、70代で15.1%と、少なくない割合で存在する。
この状況を見る限り「生活保護」という選択肢を選ばざるを得ない「おひとり様」も、それなりの数がいるはずだ。なにより今後、「就職氷河期世代」が年金を受給する年齢になれば、「生活が厳しく、生活保護に頼らざるを得ない人」はなお一層増加することになるだろう。
「悲惨な老後」を迎えないためにも、まずはできるところから、資産形成をスタートさせることが重要といえる。
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