海外投資家からの買いが途切れない日本株
さすがにチャートをはじめテクニカル的には過熱感もあり、早晩一服するだろう。酒田五法では「三空に買いなし」というが、三空どころか窓を4つも空けている。25日線乖離率は6.4%だ。
しかし、バリュエーション的にはまったく割高感はない。先週のレポートでEPS低下=PER上昇に言及したけれど、決算を締めてみればプライム市場全体としては微増益。日経平均採用銘柄でも最終利益は前期実績36兆円、今期予想36兆円でまったくの横ばいとなった。
損保3社が本日決算発表なので、東証33業種から保険を除く32業種中、21業種が増益、11業種が減益と倍ほどの開きがある。前回※述べたとおり、海運と商社の減益が他の増益を相殺するほど大きい結果だ。主力の自動車、電機、機械などはしっかりと増益となる。
好業績、金融緩和、円安、マイルドなインフレ、政治の安定、良好なマクロ環境、来年から始まる新NISA制度、そしてなにより日本企業の経営が大きく改善する機運―日本株の買い材料は数多くある。
それをよく認識している外国人の買いが途切れない。昨日発表された5月第2週の投資部門別売買向によると、海外投資家は7週連続の買い越しだった。7週連続の買い越しは2020年11〜12月以来、約2年半ぶり。累計の買越額は2兆9,000億円弱に達している。
バブル崩壊後の高値を抜いた日本株に、もはや残る壁はただひとつ。史上最高値の更新だ。日経平均でいえば3万8,915円。まだまだ、ずいぶんかかると思われるだろうか。しかし、そんなに遠い話ではない。
人間の直感は正しく数値を把握できないので、視覚に訴えよう。「率」で考えることが重要なので、日経平均のチャートを対数目盛で表示する。もうあとわずかだ、ということがわかるだろう。史上最高値から最安値までの4分の3はすでに取り戻しているのだ。
史上最高値3万8,915円は今日の9時4分につけた3万924円からあと8,000円もない。率にすれば25%の上昇で届く。繰り返そう、そんなに高い目標ではない。率にすればあと25%。年初からここまでの日経平均の上昇率は20%である。
※前回記事:日経平均「3万円台回復」が期待されるも…「コロナ特需」の反動に懸念拭えず【ストラテジストが解説】
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員