「大企業の部長」の退職金に、思わず嫉妬…
近年ますます進む晩婚化。それに伴い、子どもの誕生、住宅購入といった人生の重大なイベントも、ことごとく「先送り状態」となっている。
多くのサラリーマンたちは、60歳でリタイアすることなど考えていないし、マネープラン上もそんなことは許されない。ただでさえ、子どもの学費や住宅ローンといった重たい出費が人生の後半に偏りがちなところ、老後資金の頼みの綱となるはずの公的年金も、非常に心もとない状態だ。
どんなことがあっても65歳まで、いや、70歳まで、いやいや、少しでも長く…と、人生における就労期間は、限りなく延長されていく。同時にまた、20年先、30年先を見越したマネープランを立てておかないと、サラリーマンの老後は大変なことになってしまう。
だが、例外もある。いわゆる「勝ち組エリートサラリーマン」たちだ。毎月の給料は当然のこと、中小企業の従業員からしたら、比較にならない多額の定年退職金まで用意されている。
近年では、多くの企業が60歳を定年年齢としているものの、再雇用として65~70歳まで働けるよう、環境の整備を進めている。だが、高額の退職金を手にたエリートたちは、還暦後もあくせく働くような真似はしない。そのまま現役を引退し、悠々自適なシニアライフへとシフトするのだ。
大学卒・総合職の定年退職金の平均額は、2,563.9万円(『令和3年賃金事情等総合調査』中央労働委員会)。一方、定年直前の50代後半、大企業に勤めている大学卒のサラリーマンは平均月収(所定内給与額)57.19万円、賞与を含めた年収は857万円(『令和4年賃金構造基本統計調査』厚生労働省)となっている。
部長職ともなればさらに高給で、月収は78.40万円、年収は1,326万円にものぼる。管理職の平均退職金は月収の40ヵ月程度であることから推察すると、定年退職金は軽く3,000万円を上回る。これだけあれば、血眼になって働く必要もないのだろう。
昭和脳のアラカン「退職金で投資」での転落劇も
定年直近の月収が78万円、定年退職金3,000万円超。そんな恵まれた状況にいるエリートならきっと、優雅なシニアライフを送れるはず…。
もちろん、そんな人たちもいるが、一方で「まさかの転落劇」となるケースもあるという。その原因の多くが、投資にまつわる大失敗だ。
金融機関は、エリートの給料はもちろん、定年退職時期も把握している。そのため、定年直前の絶妙なタイミングで営業をかけてくる。
近年、金融リテラシーの重要性が叫ばれているが、定年前後の年齢となる人たちの場合、まだ「昭和時代」の意識のままの人も少なくない。金融機関のベテランにかかれば、そんなアラカンたちへの営業は、まさに赤子の手をひねる様なものだろう。耳当たりのいい言葉でプライドをくすぐりつつ、投資商品の購入を勧めるのだ。
金融機関の営業担当が勧める商品の多くは、金融機関側の利益率の高い商品が多い。それを理解できないまま購入し、結果、想定外の結果となるケースもある。そもそも、理解できない金融商品は買わない、というのが投資の鉄則なのだが…。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』(令和3年)によると、投資において「元本割れ」の経験がある人は37.9%と、かなりの割合にのぼる。また、元本割れの経験者の9割以上は「自分に問題があった」と考えている。
一方で「相場の変動によって元本割れするリスクを金融機関が十分に説明しなかったため」は4.7%、「著しい誤解を招く広告、勧誘を金融機関から受けたため」は3.6%となっている。ちなみに「金融機関の説明」を理由に挙げた人は、60代で6.6%と、50代よりも2.6ポイントほど高い。
購入した商品以前に、買い方に問題があるケースも少なくない。余裕資金の一部を失うならまだしも、手元のお金の大部分を一気に投資に回し、一気に失うという、泣くに泣けない例もある。
おそらく営業担当に「大きく増やすチャンスですよ」などと勧められ、そのまま手持ち資金の大半を投入してしまうのだろう。
上述の調査によると、金融商品の選択の基準に「利回りが良いから」を挙げる人は19.8%にものぼる。60代では16.4%、70代では15.8%とやや下がるが、それでもかなりの割合だ。利回りの良さは、リスクの高さと背中合わせだ。儲かるときは儲かるが、損したときのダメージについても、しっかり理解しておく必要がある。
そして最悪なのが、損失を取り戻そうとムチャをすること。一発逆転を狙い、さらにリスクの高い商品へ手を出してしまうのだ。
そんなことになれば文字通り、全財産を失って「死ぬまで働く」しかない。
将来のための大切なお金をリスク商品に投入することはぜひとも回避したい。退職金は、老後の大切な生活資金であり、運用には慎重さが求められる。大企業勤務の経歴を持つエリートのはずが、とんでもないしくじりでお金を失い、思い描いていた「優雅なシニアライフ」から一転「働きづめの人生終盤」とならないよう、ぜひとも注意を心がけてもらいたいものだ。
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