95歳で逝去した創業者の父…「次男・長女にも株を5%ずつあげたい」の親心がアダに! 後継者の長男を苦しめる弟・妹との「骨肉の争い」【専門家が警告】

95歳で逝去した創業者の父…「次男・長女にも株を5%ずつあげたい」の親心がアダに! 後継者の長男を苦しめる弟・妹との「骨肉の争い」【専門家が警告】
(※写真はイメージです/PIXTA)

同族会社の事業承継・相続については、税金対策を中心に様々なスキームがあります。しかし、安易にそれらを利用したせいで、かえって後継者が苦しむケースもあります。外資系生保会社のエグゼクティブ・ライフプランナーとして数多くの同族企業の事業承継・相続の問題に取り組んできた石渡英敬氏が、失敗例を題材に解説します。※本記事は、石渡英敬氏の著書『新 事業承継・相続の教科書~オーナー経営者が節税よりも大切にしたいこと』(翔泳社)から一部を抜粋、再編集したものです。

株価の5億円と現金の5億円は同じではない

民法では、亡くなった人の財産は死亡と同時に相続人によって「共有」されることが定められています。相続人それぞれの権利は、きょうだいであれば同じ権利を有するとされ、「均分相続」といわれます。

 

このとき、相続財産の中に「非上場株式」が含まれると、やっかいなことになります。

 

なぜならば、相続税を計算するための株価評価のルールは、税法上は細かく定められ、毎年ルールの見直しが図られていますが、民法上の株価評価のルールは、特に定められていないのです。

 

会社を経営する立場からすれば、会社の株価が1億円といわれても、それが現金1億円の価値があるとは思えないものです。

 

一方で、会社を経営しない人の立場からは、1億円の株価は、1億円の現金と同等の価値と見えるのです。立場が異なれば見え方も異なってくるのが「非上場株式」なのです。

 

過去に贈与された株価の評価が、時間の流れとともに変動することも、株価評価をやっかいなものにします。

 

つまり、父から贈与を受けたときには安かった株価が、後継者の子どもが頑張ったおかげで株価が高くなった場合、その株の評価は“贈与時の株価”ではなく“相続時の株価”で評価されるため、会社を継いだ者は「この株価は俺が頑張ったからだ。きょうだいにとやかく言われたくない」という気持ちになりがちなのです。

 

[図表2]決算書の5億円と現金5億円は等価とはいえない?

 

F社のケースでは、次男と長女に贈与されていた本体株式は5%ずつでした。1億円の5%は500万円ですが、同じ5%でも300億円の5%となると15億円。その差は14億9,500万円です。

 

当たり前じゃないか、と思われるかもしれませんが、株を子どもたちに分ける当事者としては、「5%くらい、後継者でない子どもにも与えたい」という気持ちになるものです。

 

しかし、安易な意思決定が、のちに大きな足かせを生むことにつながります。しかも、株式がやっかいなのは、先ほども書いたように、贈与した時点での株価が低くても、相続の時点で株価が高くなれば、当然、売買価格は高くなるのです。

 

次男と長女、2人合わせて30億円も株式の買い取りでキャッシュアウトしてしまえば、いくら過去の蓄積があっても会社はたまりません。

 

「%」で物事を見ると本質を見失います。「額」で見るクセをつけたいものです。

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新 事業承継・相続の教科書~オーナー経営者が節税よりも大切にしたいこと

新 事業承継・相続の教科書~オーナー経営者が節税よりも大切にしたいこと

石渡 英敬

翔泳社

同族企業の事業承継・相続はなぜ難しいのか? 税金対策だけに目を奪われると、本質を見失ってしまう! 法律だけでは解決が難しい問題を、13の事例を元に解説しています。 ※特定の個人が識別できないように改変済み。 ど…

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