中古不動産売買で不可欠な完了検査の「済証」とは?

前回は、コストをかけても不動産の「瑕疵」は払拭すべき理由について説明しました。今回は、中古不動産売買で不可欠な完了検査の「済証」について見ていきます。

「済証」がなければ金融機関の融資も受けられない!?

不動産にはさまざまな書類が付きものです。土地であれば、一般に権利証と呼ばれる登記済権利証が知られています。

 

法律の改正でいまは、登記識別情報という数字や符号を組み合わせた12ケタの情報に置き換わっていますが、いずれにしても、土地を売買し、買い手である新しい所有者の名前を登記簿に登記しようとする場合、売り手である元の所有者が登記事務を担う法務局に差し出す必要のあるものです。登記簿上の所有者本人であるか否かを確認するための書類や情報です。

 

一方、建物であれば、検査済証と呼ばれる書類があるはずです。ここでいう「検査」とは、建築基準法で定める完了検査です。この法律では、建物が完成した時にはその建物や敷地が建築基準法をはじめとする建築関係の法令や条例に適合していることを確認する検査を受けることを建築主に義務付けています。

 

建築主は一定の手数料を支払って、建築主事と呼ばれる行政内部の建築担当者や指定確認検査機関と呼ばれる民間会社の完了検査を受ける必要があるわけです。通称「済証(すみしょう)」と呼ばれるこの書類は、その完了検査を確かに受けていることを示しています。ルールに基づいて建設された建物であることが、それによって裏付けられているわけです。

 

不動産を売買しようとする場合、問題になりがちなのは、この「済証」がないケースです。「済証」がないということは、建物やその敷地が建築基準法をはじめとする建築関係の法令や条例に適合しているか否かがはっきりしないということです。もしかすると、違法建築物なのかもしれません。

 

法令を順守しているかどうかを意味する順法性に疑義があるとなれば、とりわけコンプライアンス(法令順守)の姿勢が強い金融機関は、その売買に融資することはありません。買い手がキャッシュで購入するのであれば問題ありませんが、そういう買い手が現れる保証はありません。融資を受けられない不動産であれば、一般に売買は難しいといえます。

 

「済証」という一つの書類がないというだけで、不動産が一気に売りづらいものになってしまうということがあり得るわけです。しかも、決して珍しいケースではありません。国は一貫して完了検査を受けることを要請し続け、建築基準法の改正で罰則規定を強化するなど完了検査率の引き上げに向けた施策を取ってきましたが、その完了検査率は2000年度に入るまでは50%にも満たなかったのが実情です。

 

ビルが2棟あれば、うち1棟は「済証」がなくても何の不思議でもないという時代があったのです。2006年度でも完了検査率は80%弱ですから、築10年を迎えたビルでも、5棟に1棟は「済証」のないビルが存在しているわけです。以前に述べたように、国はいま、既存ストックの有効活用という観点から中古市場の活性化を促そうとしています。ところが一方で、ここでご紹介したように「済証」がない建物は決して少なくありません。

「検査済証のない建築物」も有効利用したいが・・・

中古市場の活性化を促そうにも、「済証」がないことでそれが阻害されてしまう恐れが十分に考えられるわけです。そこで国は、たとえ「済証」がない建物でもせめて有効活用を図れるように、対応策を打ち出しています。

 

その一つが、国土交通省が2014年7月にまとめた「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」です。中古ビルを増改築したり用途変更したりする場合を念頭に置き、法適合状況の確認に向けたビルの現況調査をどのように進めればいいかを示したものです。

 

このような場合、建物を新築するときと同じく建築確認申請と呼ばれる手続きが必要です。そして手続きのなかでは、その中古ビルが新築時点で建築基準法をはじめとする建築関係の法令や条例に適合しているか否かを確かめることが求められます。

 

ところが「済証」がないと、それを確かめるための調査に多大な時間と費用を取られます。そのため、既存ストックの有効活用ともいえる増改築や用途変更が思うように進まないのが現実です。こうした現実を何とか打破しようという狙いです。実際、このような法適合状況の確認に向けた現況調査を実施し、その結果に基づき必要な改修工事を施すことで、金融機関の融資を引き出すことに成功した例もないわけではありません。

 

しかし、それはそう簡単には実現できません。こうした調査や改修工事には費用が掛かる上に、これらの手間の掛かる業務に対応できる建築実務者は、まだそうはいないのが実情だからです。したがって一般には、「済証」のない建物はまだまだ、不動産市場での流動性は高くないと言わざるを得ません。

 

ガイドラインでも、それに基づく調査の報告書は決して「済証」の代役を果たすものではないと明言しています。つまり、「済証」はやはり、大事な書類であるということです。

 

今後完成を迎える建物に関していえば、手数料の支出という費用負担は求められますが、建築基準法で定めている通り、完了検査は必ず受けるようにすべきです。

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    株式会社北極星コーポレーション 代表取締役

    20年間以上マンション・ビル用地の開発事業や不動産再生事業に携わる。土地オーナーへのきめ細やかな企画・提案、コストの削減・管理までを行うコンサルティングには定評がある。不動産に関するさまざまな問題に正面から取り組み、優良な都市の形成と住宅の供給に日々励んでいる。

    著者紹介

    連載知らないと損をする「不動産売却」の必須ノウハウ

    本連載は、2016年6月29日刊行の書籍『はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン

    はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン

    宮﨑 泰彦

    幻冬舎メディアコンサルティング

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