不動産の利用価値を高めた手法のひとつ
ごちゃごちゃした低層住宅の密集地がいつの間にか高層ビルや高層マンションに生まれ変わっているのを目にされたことはないでしょうか。低層住宅一軒一軒の敷地に着目すれば、それはそれで有効に活用されているはずです。目いっぱい活用しても、その程度の利用しかできなかったのでしょう。
ところがそれらの敷地をまとめると、比較にならないほど大きな建物を建設できます。だからこそ、こうした生まれ変わった街の光景があちらこちらに見られるのです。これも、不動産の利用価値を最大限に高めた例の一つです。
この現実を、不動産の売り手として利用しない手はありません。一つ一つでは利用価値の限られる不動産をいくつかまとめることでその利用価値を高めるのです。私はそれらの不動産をまとめる立場で、具体例にいくつも関与してきました。
街の一角を「等価交換」と呼ばれる手法で開発し、そこに高層ビルや高層マンションを建設する場合が、一例です。等価交換とは、不動産を所有する地権者と開発資金を提供するデベロッパーが一緒になって、高層ビルや高層マンションを建設する開発手法の一つです。
等価交換では税制上の不都合も解消!?
共同事業の一形態で、地権者は開発資金を負担することなくビルやマンションを建設することが可能で、所有していた不動産の評価額に見合う土地・建物の権利を、そのビルやマンションの中に手に入れることができます。元の不動産の権利と、新しい不動産の権利を、等価を原則に交換するわけです。
考え方としては、所有していた不動産をいったん手放して、その代金で新しく建設されたビルやマンションの一部を購入するような仕組みです。ただ実際にそうしたプロセスを踏めば、不動産を売却している以上、その売却によって生まれた利益に課税が発生します。譲渡益課税と呼ばれるものです。
仮に8000万円で売却できたとしても、この課税によって普通はその8000万円がまるまる手元に残ることはありません。課税によって6000万円しか手元に残らなければ、新しいビルやマンションの中には6000万円分の権利しか所有できないはずです。つまり、等価では交換できないということです。等価交換はその不都合を解消する、税務上の措置という顔も持っています。
最初の段階では等価での交換を認め、そこで発生するはずの課税を、等価交換で新しく手に入れたビルやマンションの権利を将来売却する時点まで繰り延べしてくれるのです。この措置が適用されるため、等価交換は開発手法の一つとして広く活用されてきました。