本連載では、売買実績500件のプロが、自分の資産である不動産を高値売却するための必須ノウハウを、実例とともに解説していきます。今回は、今後「中古不動産市場」が活性化していく理由を見ていきます。

国を挙げて「中古住宅」市場の活性化を促進している!?

不動産の高値売却に向けた基礎知識としてまずご紹介しておきたい点があります。それは、さまざまな土地・建物のなかでとりわけ中古住宅の売買市場は流動性を高めていくに違いないという点です。国を挙げて市場の活性化に取り組んでいるからです。

 

もちろん、読者の皆さんが所有する不動産を売却しようとするのは、中古市場が活性化に向けてテコ入れされようとしているからではないとは思います。不動産市況はまだ好調さを見せていますから、いつか売却するならいまだとタイミングを見計らっての判断かもしれませんし、何らかの理由で資金需要が発生し、その結果、泣く泣く手放さざるを得ないという事情があるのかもしれません。

 

それでもあえて、ここでこのテーマに言及するのは、中古市場の活性化には、既存建物の資産性を高めていこうという狙いがあるからです。つまり、新築時から一定の年数が経った古いものであるというだけで不当に安くしか評価されない建物を、適切に評価していこうという流れがあるのです。

 

古いものは安い。これは真理です。希少性の高い一部の中古品はむしろ新品の時より高く評価されることはありますが、一般的には使用済みの中古品は安くなるものです。ところが、同じ中古品でも戸建て住宅だけは特異です。建物の評価では明確な根拠のないまま不当な扱いを受けているのです。

 

新築からおよそ20年も経つと、建物の価格はゼロと見なされてしまいます。築20年でボロボロになっているならともかく、手入れが良くて見た目は新築時とそう変わらなくても、一律にそう評価されるのが普通です。これでは、中古戸建て住宅を売却しようとする売り手は釈然としないでしょう。

 

一昔前であれば、土地の値上がり益が見込めたので、たとえ建物の評価はゼロでも損はなかったかもしれません。しかしいまはもう、そういう時代ではありません。いまでこそ不動産市場は好調さを保っていますから、土地によっては値上がり益を見込めるかもしれませんが、いつでも、どこでも、というわけにはいきません。

住居用の不動産でも「資産形成」の一環という意識を

売り手ばかりではありません。こうした現状は、国民経済の観点からも好ましくないといわれています。住宅投資が資産形成に結び付いていないからです。住宅投資額の累計が約890兆円であるのに対し、住宅ストックの評価額は2013年時点で約350兆円です。資産額は投資額を約540兆円も下回っている計算です。

 

同じことを家計レベルで考えてみましょう。新築時に仮に5000万円を住宅に投じたとします。土地代と建物代を同じ2500万と仮定します。およそ20年経って建物の評価がゼロになってしまうということは、その時点での資産額は地価の上昇を見込まなければ2500万円にすぎません。建物代に相当する2500万円分はまるまる失われてしまう計算です。

 

不動産が居住用だから、それで許されてきた面もあるのでしょう。しかし、たとえ居住用不動産への投資だとしても、資産形成の一環です。「老後破産」という言葉がもてはやされているように、リタイヤ後の生活資金をどう確保するか、多くの人が頭を痛めている時代です。だからこそ、住宅投資が資産形成に結び付かないようでは困るわけです。

 

いざとなれば売却してどこかに移り住み、そこで安心して生活を送ることができるくらいの資産価値を自宅に見込むのは、そう無理があるとも思えません。こうした事情から、中古の建物を適切に評価しようという流れが生まれています。国では中古住宅の建物評価の改善に向けた指針を策定し、評価の改善が不動産市場や金融市場に定着していくことを促そうとしています。

 

また売り手と買い手の双方が中古の建物を適切な評価に基づいて安心して売買できるように、売買仲介の段階で「インスペクション」と呼ばれる建物検査の実施を促すような方向を推し進めています。

 

一方で、中古建物のままでは新築に比べて市場性に欠ける面があることから、建物に手を加えて価値を高めるリフォームやリノベーションなどの事業に乗り出す民間事業者も出てきています。国が中古市場の活性化に向けて施策を展開するのに合わせて、市場を新しく切り開いていこうと事業展開を図っているわけです。

 

成長経済から成熟経済に転じたことで、新規の投資もさることながら、既存のストックを活用することが求められるようになってきました。中古住宅の売買市場を活性化しようというのは、その一環ともいえます。そしてそれは、何も中古住宅に限った話ではありません。中古不動産一般に共通する話です。

 

今後、不動産は流動性を高め、いまよりもっと売却しやすい資産になっていくと考えられます。ただそれは、売り手にとって有利に、つまり高値で売れるということを必ずしも意味しません。高値で売るには、まだまだ知っておくべきことがあります。流動性の高まる時代はむしろ、それを熟知しておく必要性がいっそう高まるはずです。

本連載は、2016年6月29日刊行の書籍『はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン

はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン

宮﨑 泰彦

幻冬舎メディアコンサルティング

最高値を引き出す業者選びのポイントとは? 安値で買い叩かれないために必要な対策とは? できるだけ有利な条件で取引するために知っておくべきことは? 売買実績500件のプロが教える、高値売却を実現するための必須ノウハウ…

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