不動産の価値を大きく左右する「土地の欠点」
需要層をできるだけ幅広に、しかも厚めに確保するには、その不動産に欠点がないことが最低限必要です。
不動産として非の打ちどころがなければ、エンドユーザーも投資家も事業者も、多くの人がそれを購入したいと考えるに違いありません。しかし、長い年月にわたってさまざまに利用されてきた市街地の土地は、どこかに欠点を持っていても不思議ではありません。欠点というのは、その土地を利用しようとする場合に妨げになるものがまず考えられます。
さらに、土地利用の妨げにはならないものの何らかのリスク要因をはらんでいる場合には、それも欠点の一つに数えられます。エンドユーザーであろうが投資家であろうが事業者であろうが、土地は利用するのが前提です。その土地を100%利用できなければ、本来そこから得られるはずの収益が抑えられることになります。
また何らかのリスク要因をはらんでいるとすれば、そのリスクを低減させるためにコストを負担しなければなりません。収益が左右されたりコスト負担を強いられたりするということは、不動産の価値に大きく影響します。
土地の欠点として具体的には、土壌汚染が挙げられます。化学工場として利用されていたというような事情から、土壌や地下水が有害物質に汚染されているという例です。こうした土地を仮に住宅用地として利用した場合、そこに居住する人が将来健康被害を受ける恐れがあります。そこで国では、土壌汚染対策法と呼ばれる法律を制定し、リスク回避に向けた一定の手続きを定めています。
土壌の汚染された土地でその手続きを済ませるには相応のコストが掛かるだけに、それは重大な欠点として認識されるわけです。
こうした不動産の欠点を「瑕疵(かし)」と呼んでいます。「瑕」という字も「疵」という字も「きず」を意味します。いわゆる「きずもの」の「きず」です。この瑕疵は不動産のなかでは建物でも見つかります。住宅の場合によく挙がるのは、雨漏りです。設計通りに施工されていなかったため通常想定される性能を発揮できない、それが一つの典型例です。
「瑕疵に気付かなかったふり」はトータルで損をする!?
「欠陥」という言葉が使われることもあります。土地にしても建物にしても、不動産に瑕疵があるなら、売却時に売り手はそれを明らかにしなければなりません。商品の欠点を明かすわけですから、それは当然、値引き交渉の格好の材料として利用されます。欠点が多いほど、値引き交渉の材料を買い手側に多く握られることになってしまうので、売り手にとっては不利です。
もちろん、瑕疵があったとしても、それが当面は発覚しないことも考えられます。売買が成立した後にたまたま発覚することもあり得ます。その場合、一定の期間が経過するまでは売り手が責任を負うのがルールです。売り手は指摘された瑕疵を補修したり損害賠償請求に応じたりしなければなりません。場合によっては、売買契約の解除に応じざるを得ないという事態さえ考えられます。
ただし、売り手として売買契約の中にその免責条項を書き入れ、それを買い手として承諾することもあります。不動産の履歴を調べた上で免責条項を受け入れても問題なさそうであると判断した場合です。免責条項はこのような判断を基に受け入れる買い手もいますし、受け入れない買い手もいます。この点は、確認が必要です。
売買契約から最長10年も経つと、瑕疵担保責任期間と呼ばれる、これらの責務を果たすべき期間は過ぎます。したがって、買い手から瑕疵を理由に何らかの請求を受けたとしても、それに応じる必要はなくなります。しかしだからといって、売買契約の時点では瑕疵に気付かなかったふりをするというのは通用しません。
たとえ瑕疵担保責任期間の経過後であるとしても、瑕疵が発覚した時点で不法行為責任を追及される可能性もあるからです。瑕疵に気付かなかったふりをして仮に高値で売却できたとしても、この段階で訴訟に負けて損害賠償の必要が生じてしまっては元も子もありません。いくら目先で儲けることができたとしても、長い目で見てそれが先々の損につながることもあるわけです。
したがって売り手としては、売却しようとする不動産に瑕疵があるのかないのか、まずはしっかり認識することが不可欠です。その上で、何らかの手を打って瑕疵をなくすことができるのであれば、事前に一つ一つ、丹念につぶしていくことが求められます。
欠点をなくしていく作業には、確かに一定のコストを掛ける必要があるでしょう。しかしそこでもやはり、目先の利にとらわれて出費に足踏みするようではいけません。むしろコストを掛けることで、不動産を高値で売却することができます。一時の出費は必要かもしれませんが、トータルで見てプラスを得られるわけです。ここでの出費は将来の高値売却に向けた投資と言うことができます。
目先の利ではなく、トータルの利を追求する。不動産を高値で売却しようとするなら、売り手にとってはこの点も気構えとして肝に銘じておきたいものです。