前回は、不動産の開発手法として活用されている「等価交換」について見ていきました。今回は、周囲の土地をまとめてマンション用地としての価値を高めた事例について見ていきます。

一気に約4倍まで高まった評価

前回の続きです。東京都大田区内で等価交換を用いて分譲マンションの開発を進めていた一角があります。最終的にまとまったのは、低層住宅8軒分。土地の広さで約300坪です。ここには、大手のデベロッパーが地上7階建ての分譲マンションを建設する計画です。この一角の奥まった場所にある広さ6坪程度の住宅が立つ借地はそれ単独で考えれば、800万~1000万円程度の価値しかありません。

 

この開発プロジェクトに私の前に携わっていた不動産会社は、この借地の権利者に評価額として約1300万円を提示し、中古マンションに引っ越すように促したそうです。この評価額では新しく建設される分譲マンションの中に権利を手に入れようがありません。床面積としてもわずかな広さにしかならないからです。

 

自己資金があれば等価交換で得られる権利にそれを加えて、一つの住戸を手に入れることができますが、自己資金がなければ自らの権利を売却処分して立ち退くほかありません。

 

ところがこの借地には、私がこの開発プロジェクトに携わるようになってから、最終的に約4800万円という評価額が付きました。当初持ち掛けられていた約1300万円に比べると、およそ4倍です。借地の権利者にとってみれば、評価額をおよそ4倍にまで高めることができたわけです。

「土地の評価」を高めることができた理由

なぜここまでの開きが生じるのでしょうか。これこそ、一つの土地単独での評価とまとまった土地での評価の差です。それはつまり、その土地を単独で手に入れた場合と周囲とともにまとめて手に入れた場合の利用価値の差にほかなりません。

 

わずか6坪程度の広さの建物しか立たないような土地ですから、一つの土地単独であれば、その土地の利用は限られます。しかもこの借地の場合、再建築不可と呼ばれる建て替えの認められないものでした。たとえ既存の建物が立っていても、敷地と道路との関係によっては建物を新しく建設することができないケースがあるのです。

 

ところが周囲の土地とまとめられれば、状況は一変します。このポイントの冒頭で例示したように、そこに高層ビルや高層マンションを建設することができるようになります。それは、より幅員の広い道路を前面道路にすることができるようになって、敷地に適用される容積率が大きく引き上げられるからです。

 

容積率が引き上げられるということは、それだけ広い床面積を確保できるようになるということ。それは収益性の向上に直結します。そのため、高収益に見合う対価を、まとまった土地の一部に対しても見込むことができるようになるわけです。

 

土地をまとめるという行為は通常、その土地とは無縁の不動産会社が手掛けるものですが、それを近所との合意のなかで自分たち主導で進めていくということも考えられます。周囲の土地とこうしてまとまっていくことで自らの不動産の価値を高める、そうした共同戦線を張るような売り方もあることをご認識ください。

本連載は、2016年6月29日刊行の書籍『はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン

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宮﨑 泰彦

幻冬舎メディアコンサルティング

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