(※写真はイメージです/PIXTA)

相続時に意外と起こりがちなのが、親の山や古家など「売れない土地を相続してしまった」という問題です。なかなか売れず、固定資産税がかかり、管理を放置すると近隣トラブルに発展してしまうことも……。こうした場合、所有権を手放すにはどうすればいいのでしょうか。永田町司法書士事務所の加陽麻里布氏が、このような「負動産」を相続した際の対策と注意点について解説します。

売れない山や畑を相続した!所有権の「放棄」は可能?

司法書士である筆者は、よくみなさまから「売れない土地を相続してしまった場合どうしたらいいのか?」とよくご質問をいただきます。しかし現行の法律上、土地の所有権を放棄することはできません。

 

地方出身の方などで「将来的に親の畑や山を相続するかもしれない」と思う方にはぜひ知っていてほしいのですが、山や畑は基本あまり売れません。

 

「じゃあ(相続した)自分もいらないよ」となったとしても、どうしても固定資産税がかかります。また、山林は放置すると雑草が生い茂ってしまい、近所の方からクレームが入ってしまうことも……。

 

こういった事情から、「相続した山や畑は売れないしお金がかかるから登記しない」という選択肢をとる方も多く出てきました。近年ではこうした方が続出したことによって、「所有者不明土地問題」がどんどん拡大しています。

 

これを受け、来年(令和6年4月1日)より相続登記が義務化されることになりました。

 

しかし、相続登記を行うにあたっては費用(不動産評価額の0.4%の登録免許税)がかかります。また、戸籍の収集にも時間を要します。さらに、相続人全員と連絡が取れなければ遺産分割協議もまとまりません。

 

こうなると、相続登記をしたくないと思ってしまうのも無理はありません。

 

しかし、不要な土地を相続登記しないということはメリット以上にデメリットのほうが多いのです。

相続登記を放置・拒否する「デメリット」

巷には「不要な土地は相続登記をしなければ固定資産税がかからない」という話もありますが、それは間違いです。登記をする・しないにかかわらず、固定資産税や管理費はかかります

 

登記をしなければ、登記費用や司法書士報酬がかかりませんし、手間もかかりません。これはメリットといえます。

 

その一方で、相続登記が義務化されたのにもかかわらず登記をしないとなれば、10万円以下の過料の対象になります。また、長期相続登記未了により「相続関係の複雑化」が起きることも大きなデメリットです。

 

相続登記を放置するとどんどん相続人が増えてしまい、相続人を追い切れない状態になってしまいます。すると、その土地は宙に浮いたまま立ち行かないものになりますが、その“立ち行かない土地”に急な需要が発生すると、対応することができません。

 

また、他の相続人が「相続登記がまとまらない」として勝手に登記売却した場合、相続問題に「持分買取業者」も介入することになります。すると、ますます相続登記を完了させることが難しくなってしまうのです。

 

したがって、ぜひとも相続登記は放置せず、どんなにいらない土地でも相続登記を行っていただきたいというのが専門家としてのアドバイスです。

 

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