“条件”が揃えば遺言書の内容を無視できるが…
たとえば資産1億円の父が亡くなり、遺言書に「妻に5,000万円、長男に3,000万円、次男に2,000万円」と書かれていた場合を考えてみましょう。
上記の内容に妻と長男が納得し、次男が納得しなかったとしても、これは原則遺言書通りに遺産を分けなければいけません。それほど「遺言書」には大きな効力があります。
しかし、遺言書があるからといって分割方法を変えられないわけではありません。「作成された遺言書の内容は変更できない」と考える方は非常に多いですが、実際には一定の条件が揃えば変えることができます。
この“一定の条件”とは、「相続人全員の同意がある」ということです。相続人全員が同意をすれば、遺言書と別の内容で遺産の分割が可能になります。
ただし、もし遺産分割協議を行ってもまとまらない場合は、「調停申立」を行います。この「調停分割」の段階になると、相続人同士はすでに敵対した状態になっていますから、本人同士は協議をせずに「調停委員」を間に挟んで解決を目指します。
この調停もまとまらなかった場合は、最終的に「審判分割」として裁判官が強制的に決定します。この審判分割の決定時に大きな材料となるのが、「遺言書」です。遺言書の存在は、やはり大きいものです。
「争族の長期化」はデメリットしかない
つまり、先ほどの事例において、遺言書の内容に納得できない次男が「遺言書どおりには分けない!」と言ってトラブルになったとしても、遺産分割協議もまとまらず、調停もまとまらず審判分割になった場合、結局「遺言書通りに分けなさい」ということになる可能性があります。
ここまで泥沼化しなかったとしても、相続人間の争いはとにかくデメリットしかありません。
遺産分割協議成立までに何年もの時間がかかることもありますし、「時間がかかる」というのは税制上のデメリットにもなります。相続税申告日までに協議ができなければ相続における特例措置を受けることができず、税制上不利な状況に陥ることがあるためです。
その他にも、解決しないあいだは不動産や現金も永遠に凍結されたままになってしまいますから、争族の長期化は避けるべきです。円滑な遺産分割協議ができるよう、遺産をのこす方が生前対策を行っていくことが大切です。
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