(※写真はイメージです/PIXTA)

2022年11月に米国企業によりリリースされた、AIチャットサービス「ChatGPT」。2023年1月にはアクティブユーザー数が早くも1億人を突破し、注目を集めています。では、この「ChatGPT」をはじめとするAI技術は、医療現場でどのように応用することができるのでしょうか。現役医師兼医療ベンチャーのCEOを務める多田智裕氏と川口肛門胃腸クリニックの医師小澤毅士氏が、AIを活用した医療DXの現状と今後の可能性について考察します。

ChatGPTは進化途中…現時点では「正確」ではない

2023年2月、「ChatGPTは特別なトレーニングなしで、アメリカの医師国家試験をほぼパスできる能力がある」というニュースが話題になりました。

 

これは、ChatGPTが現時点ですでに“なりたての研修医”レベルの医学知識を持っているということを示しています。医療専門書や試験の過去問を学習させるなど特別なトレーニングを行えば、すぐに正答率は大幅に上昇するでしょう。

 

逆にいえば、現時点でのChatGPTの学習データが、ネット上の一般的なサイトやニュースなどの情報がもとになっていることには注意が必要です。ネット上に出回っている医療情報は、やはり正確であるとは限りません。

 

学習データが正確でなければ、返答は当たり前ですが間違った(もしくはトンチンカンな)ものになります。ChatGPT自体も学習データが正確かは判断できていませんから、間違った学習をしている可能性も十分にあります。

 

したがって、現時点では心身になんらかの症状が出た際、病院に行かずにChatGPTに頼ることはおすすめできません(そもそもまだ専門医レベルの知識量には至っておらず、ChatGPTも必ず最後に「医師に相談して適切な治療を受けることをおすすめします」と述べています)。

ChatGPTは医療にどんな「変革」をもたらす?

一方、近い将来ChatGPTやAI技術が、医療業界にも大きな変化を起こすことは間違いありません。

 

多くのメジャーな疾患は現在「ガイドライン」が発刊されており、そこに最新の診断から治療までが詳細に記載されています。このガイドラインは診療の質を均てん化するために作られており、非常に細かに、わかりやすく書かれているものが多いです。

※ 均てん化……全国どこでも標準的な専門医療を受けられるよう、医療技術等の格差の是正を図ること(厚生労働省HPより)。

 

そのため、基本的には専門医でなくても、ガイドラインを読んでそれに沿ったことを行えば、大半の診断から治療までをカバーすることはそれほど難しいことではありません。

 

もちろん、そんなガイドラインでもカバーしきれない部分こそが専門医の腕の見せどころですが、一般診療における診断と内科治療(薬物治療)のうち、8割程度はAIが代替できるのではないかと筆者は考えます。

 

ただし、性能的な問題に加えて、AIの診断に対する「責任の所在」などの問題もありますから、すぐに一般化できる話ではないでしょう。

 

診断の責任の所在とは、つまりAIが誤診したり、間違った治療を提供して患者に不利益が生じた場合、「誰が責任をとるのか」ということです。

 

この点、「医学的なものではありません」という注釈つきでAI診療を提供している業者がすでに存在しますが、AIによる誤診を信じたばかりに適切な治療のタイミングを逃し、病状がいっそう進行してしまうなどの問題が起こっている可能性があります。

 

したがって、医師の介入なくしてAI一次診療が一般化するには、AIの精度を専門医を超えるレベルまで向上させる必要があります(とはいえ、すべての最新情報を専門医並みにアップデートしてAIに学習させることはかなり困難かもしれません。2023年現在も、実際にChatGPTは2021年9月までのデータしか学んでいないのですから)。

 

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