(※写真はイメージです/PIXTA)

2022年11月に米国企業によりリリースされた、AIチャットサービス「ChatGPT」。2023年1月にはアクティブユーザー数が早くも1億人を突破し、注目を集めています。では、この「ChatGPT」をはじめとするAI技術は、医療現場でどのように応用することができるのでしょうか。現役医師兼医療ベンチャーのCEOを務める多田智裕氏と川口肛門胃腸クリニックの医師小澤毅士氏が、AIを活用した医療DXの現状と今後の可能性について考察します。

「ここら辺が痛い」はNG…AIツール利用時の注意点

医療において、ChatGPTなどのAIツールを使うには、最低限の「医療リテラシー」を持ち合わせることが重要です。

 

筆者は消化器科・肛門科を扱うクリニックに勤めていますが、いらっしゃる患者さまからのよくある訴えは「お尻が痛い」です。その多くが、(外側の)いぼ痔や切れ痔、肛門周囲の皮膚が荒れていることで「お尻が痛い」と訴えて来院されます。つまり、「お尻」といっても正確には「肛門が痛い」ということになります。

 

ChatGPTに「お尻が痛い」と入れると、

 

1.長時間座っていることによる筋肉の緊張や圧迫

2.不適切な座り方や悪い姿勢

3.筋肉痛や筋肉のけいれん

4.お尻の周辺の皮膚病変(たとえば、ひび割れや切れ痔)

5.坐骨神経痛(しびれや痛みがお尻から足にかけて放散する場合)

6.骨盤底筋の緊張や不調

 

と、痔や肛門周囲膿瘍などの疾患可能性を無視した答えが返ってきます。つまり、「質問の仕方によっては欲しい回答は得られないことがある」ということがわかります。

 

実際、症状のある身体の部位や状態を正確に、端的に述べられる人は案外少ないのではないでしょうか。普段診療をしていて、おなかの痛い部位を聞いても、指をさして「ここら辺」としか答えられない人が多いですし、胆嚢や脾臓がなんのはたらきをしているかわかっている人は皆無に近いです。

 

したがって、ある一定の医療リテラシーは持っておかなければ、AIを効果的に活用するのは難しいといえます。

AI×医師の“協働”で可能に…医療DXの「未来予想図」

医療現場では現在、AIを使った医療機器が多く登場しています。たとえば、レントゲンや内視鏡などの画像に映った病変をAIが自動的に拾い上げたり、診断候補をつけたりして、医師の見逃しや誤診を防ぐアシストをしてくれるものがあります。

 

医師はそのAIの解析結果を参考に、最終的な診断を行います。つまり、医師とAIが協働して診療を行っているのです。

 

将来的には、患者さまがオンラインで症状を述べて、スマートウォッチで体温・脈拍や血圧などを測定し、ときには機器とデータが連動した聴診器を胸に当ててもらい、カメラで全身を映して、さらに医師による「遠隔触診」ができれば、家にいながらAIと医師の連携した診療を受けることが可能になります。

 

これに加え、「処方された薬はドローンで即日配達」という未来が実現するのもそう遠くないかもしれません。

 

また、最近主流となっている「ロボット手術」とAIを組み合わせることも技術的には可能です。現在は医師が単独でロボットを操作して手術を行っていますが、将来はAIアシストのもとで医師が手術を行うロボットによって、より精度の高い手術を誰もが享受できるようになるでしょう。

 

そのようなAIが登場したとき、あなたは医師単独の診療と「AI×医師」の診療、どちらを選ぶでしょうか?

 

※本稿執筆時、「ChatGPT4」を検証用に使用しています。

 

 

多田 智裕

株式会社AIメディカルサービス

代表取締役CEO

 

小澤 毅士

川口肛門胃腸クリニック

医師

 

 

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