「商流」が下になるとブラックになりがち
ここまで会社選びの判断軸として、業界と会社の構造、状況からブラック企業になりやすい特徴を見てきました。あと1つ、「商流」を把握すればブラック企業対策はバッチリです。商流とは「商的流通」の略で、生産者から消費者まで商品の所有権が移転されていく売買活動の流れを指します。川の流れのように上から下へと流れていきますが、分かりにくいので例を挙げて説明しますね。会社同士の商流の代表的な例は3つあります【図表】。
1つ目は仕入から販売に至る流れです。業務用エアコンを例にすると、商社は家電メーカーから業務用エアコンを仕入れます。そして飲食店へ卸売りしますが、この流れでは商社から見ると、メーカーが仕入先、飲食店が販売先になります。仕入先⇒自社⇒販売先と商品が移転するので、その流れが商流となります。
2つ目は依頼元から依頼先に至る流れです。トラックでの大型重機の物流を例にすると、荷物の依頼元(ここでは仮に建設現場を取り仕切る建設会社としましょう)は、物流会社へ大型重機の配送を依頼します。そして物流会社は依頼先(ここでは仮に建設会社が施工しているレジャー施設としましょう)へ大型重機を配送しますが、この流れでは物流会社から見ると依頼元⇒自社⇒依頼先と大型重機が移動していくので、その流れが商流となります。
3つ目は元請けと下請けの流れです。IT業界におけるシステム開発委託を例にすると、発注企業が元請け企業のSIer(システムインテグレータ。システム開発や運用等を請け負うサービス事業者の略称)へシステム開発を依頼します。そして元請け企業は自分たちの人員だけで開発するのは難しいので下請け企業(2次請け)へ仕事を流し、下請け(2次請け)企業がまたその下請け(3次請け)企業に…と発注が川というよりむしろ滝のように流れていきます。この流れでは下請け(2次請け)企業から見ると元請け⇒自社⇒下請け(3次)企業と仕事が移転されていくので、その流れが商流となります。
3つの商流ともに、下流に位置する会社ほど社員の待遇が悪くなる傾向があります。商流的に上の会社の言いなりになりがちのため、値上げ等の希望が通らないからです。また、下流に近づくと個人客相手の事業となるので疲弊しやすく、さらに中間に位置する会社に利益を中抜きされることでブラック企業化しがちなのです。逆に商流が上流だと、中間に位置する会社に利益を乗せられることがないため、適正価格で取引でき、会社も儲かります。自動車業界を例にすると、細かい部品工場の下請けメーカーと、その中間メーカーと、元請けの自動車メーカーだったら、どの会社の待遇が良いかは分かりやすいと思います。
もちろん商流も、業界や会社と同じように例外的な流れはあります。「特許取得等でその企業でしか生産できない部品を取り扱っている」「スーパーエンジニアを複数抱える等でその企業でしかシステム開発できない」といったものですが、商流もまた転職先の業界・会社選びの参考にしていただければと思います。