(※写真はイメージです/PIXTA)

具体的相続分に相続開始から10年の期間制限が設けられたことに伴い、改正法では、遺産分割の調停・審判の取下げにも制限が設けられました。本稿では、荒井達也氏の著書、『Q&A 令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響』から一部を抜粋し、遺産分割を促進するために新設された規律について、Q&A形式で解説します。

遺産分割を禁止する合意・審判をめぐる改正

Q:

遺産分割を禁止する合意・審判に関して、どのような改正をしていますか。

 

A:

改正法において具体的相続分に期間制限を設けたことに伴い、改正法では、(1)共同相続人間の合意による遺産分割の禁止及び(2)家庭裁判所の審判による遺産分割の禁止に関して、いずれも相続開始の時から10年を超えることができない等の規律が設けられました。

(※写真はイメージです/PIXTA)

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解説

旧法下の解釈では、共同相続人が、一定の期間を定めて遺産分割を禁止する合意をすることができるものの、その期間は5年を超えることができないと解されていました。

 

また、旧法では、家庭裁判所は、相続人が遺産分割を家庭裁判所に請求した場合において、特別の事由があるときは、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができるとされていました(改正前民法907条3項)。

 

この遺産分割禁止期間は、解釈上概ね10年を超えることはできないと解されていましたが、明文の規定はなく、解釈上も明確ではないところがありました。

 

もっとも、改正法では遺産分割を促進するために具体的相続分に期間制限を設けているため、この期間を超えるような長期の遺産分割の禁止が認められてしまうと、遺産分割の促進という立法目的が達せられないと考えられます。

 

改正法の規律ー10年以上の分割禁止が不可

改正法では、(1)共同相続人間の合意による遺産分割の禁止及び(2)家庭裁判所の審判による遺産分割の禁止に関して、次の規律が設けられました。

 

(1)相続人間の合意による分割の禁止

まず、相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができます(改正後民法908条2項本文)。この契約は、更新することができますが、その期間は、更新の時から5年を超えることができません(改正後民法908条3項本文)。

 

そして、更新の有無にかかわらず、これらの合意は相続開始の時から10年を超えることができません(改正後民法908条2項但書及び同条3項但書)。

 

(2)家庭裁判所の審判による分割の禁止

次に、家庭裁判所は、相続人が遺産の分割を家庭裁判所に請求した場合において特別の事由があるときは、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができます(改正後民法908条4項本文)。

 

また、家庭裁判所は、この期間を更新することができるものの、その期間は、更新の時から5年を超えることができません(改正後民法908条5項本文)。

 

なお、更新の有無にかかわらず、相続開始の時から10年を超えることができない点は(1)の場合と同様です(改正後民法908条4項但書及び同条第5項但書)。

 

Q&A 令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響

Q&A 令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響

荒井 達也

日本加除出版

「どうすれば、実務家が短時間で効率的に今回の改正の要点を理解し、実務対応を検討できるか」を至上命題とした、知識の習得だけでなく実務への応用に活かせる一冊。日弁連所有者不明土地問題等に関するワーキンググループの幹…

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