(※写真はイメージです/PIXTA)

具体的相続分に相続開始から10年の期間制限が設けられたことに伴い、改正法では、遺産分割の調停・審判の取下げにも制限が設けられました。本稿では、荒井達也氏の著書、『Q&A 令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響』から一部を抜粋し、遺産分割を促進するために新設された規律について、Q&A形式で解説します。

遺産分割を禁止する合意・審判をめぐる改正

Q:

遺産分割調停・審判の取下げに関して、どのような改正をしていますか。

 

A:

旧法では、遺産分割の調停・審判の取下げについて原則的に自由に行うことができましたが、改正法では、具体的相続分に期間制限が設けられたことに伴い、相続開始から10年を経過した後の取下げが制限されることになりました。

 

解説

旧法では、遺産分割「調停」の取下げには制限がなく、申立人は自由に取下げを行うことができました(家事法273条1項)。

 

また、遺産分割の「審判」の取下げについては、基本的に相手方が本案について書面を提出するまでは、自由に行うことができました(改正前家事法199条において準用する家事法153条参照)。

 

もっとも、改正法により、具体的相続分に期間制限が設けられたため、申立人となった相続人により自由に取下げができてしまうと、相手方である他の相続人が不利益を被るおそれがあります。

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

改正法の規律―相続開始10年経過後の取下制限

改正法では、相続開始時から10年を経過した後に行う遺産分割の調停・審判の取下げは、相手方の同意を得なければ、その効力が生じないという規律が設けられました(改正後家事法199条2項)。

 

これは、相続開始後10年を経過した後は、基本的には、具体的相続分による遺産分割が制限されるため、他の相続人の利益が害されないようにする趣旨です。

 

他方で、相続開始から10年を経過する直前に取下げがされた事案については、改正法の規定は適用されないものの、相続開始後10年を経過する前にやむを得ない事由によって申立てをすることができなかったものとして、改正後民法904条の3第2号により処理されることになります。

 

【図】改正法による遺産分割調停・審判の取下げの制限(著者作成)

 

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Q&A 令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響

Q&A 令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響

荒井 達也

日本加除出版

「どうすれば、実務家が短時間で効率的に今回の改正の要点を理解し、実務対応を検討できるか」を至上命題とした、知識の習得だけでなく実務への応用に活かせる一冊。日弁連所有者不明土地問題等に関するワーキンググループの幹…

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