(※写真はイメージです/PIXTA)

松田英子氏の著書『1万人の夢を分析した研究者が教える今すぐ眠りたくなる夢の話』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、日本人の不眠症とアルコールの関連について紹介します。

「寝不足」と「依存症リスク」の関係

日本人は世界的にみても寝不足です。しかも寝不足の人、つまり睡眠負債を抱えた人は、のちに依存症を発生するリスクを高めるという研究結果があります。事実、アルコールのほかニコチン、カフェインなどの物質に過度に依存し、切らすと離脱症状が出るなど精神的身体的な依存状態の物質乱用者は不眠症など睡眠障害を合併する方もいます。

 

精神医学的な飲酒の依存症判断に用いるスクリーニングテスト(*1)では、日本人はアルコール依存症に近い得点を取る人が多いような気がします。私も禁断症状などの離脱症状がないだけで、まあまあ飲んでいるほうなのだなと驚いたことがあります。

 

このコロナ禍で少し変わったかもしれませんが、日本の社会人には飲酒文化が根づいているようです。こうした日本人の不眠症とアルコールの関連は興味深いテーマです。

「寝酒」がもたらす悪循環

ナイトキャップといって、入眠を誘う習慣としてアルコールを利用している人もいらっしゃるのではないかと思います。実際、眠気は誘うのですが、中途覚醒と早朝覚醒をもたらし、眠りのリズムを乱してしまいます。また眠るためのアルコール摂取はだんだんと耐性がつき、飲酒量が増えていきます。そのため、アルコール依存症を発症するリスクを考えると就寝前飲酒はおすすめできません。

アルコール依存症になれば、「睡眠」はさらに悪化

アルコールはレム睡眠を阻害し、レム睡眠が出現したときには悪夢をもたらし、睡眠の恒常性を乱すことが指摘されています。アルコール依存症患者は飲酒直後よりも、アルコールをとにかく欲してしまう離脱症状時に悪夢をみることも調査でわかっています。

 

ここからは、アルコール依存症患者の断酒継続のための自助グループに参加している方に協力していただいた研究の結果(*2)をご紹介します。

 

<断酒継続時と断酒前の離脱症状時の比較>

現在(断酒継続時)より過去(断酒前〈離脱症状時〉)の睡眠において、不眠得点が高く、入眠(寝つき)困難、中途覚醒、早朝覚醒、睡眠の質量の問題、日中の問題と、すべてにおいて評価が低かった──つまり断酒後のほうが睡眠は改善している様子がうかがえます。また、断酒継続時の夢のほうがポジティブ感情の体験頻度が多かったのですが、夢のネガティブ感情について差はみられませんでした。「飛ぶ夢」、明瞭夢、夢想起頻度には、断酒前後で差はみられませんが、「落ちる夢」「追いかけられる夢」「目が覚める悪夢」「目が覚めなかった」といった悪い夢は断酒前(離脱症状時)のほうが断酒継続時に比べて多かったのです。

 

夢の感覚については、すべてにおいて、断酒前後での差はみられませんでした。

 

アルコール依存症であったときのAUDIT(飲酒量のスクリーニングテスト)では、アルコールへの依存度が大きいほど、日中の気分、活動性、眠気などの睡眠の問題への自覚の強さと関連がみられました。

 

具体的には、「一度に飲む量が多い」「飲酒後の後悔が強い」「飲酒を控えるようすすめられている」人ほど、夢の中でのポジティブ感情体験が少ないことがわかりました。

 

また飲酒をやめられない頻度が高い人ほど、夢で怒りの感情を多く体験していました。

 

飲酒後の罪悪感の体験頻度が高い人ほど、翌朝飲まないと働けなかったなど、日中の活動が低下していました。

 

さらに1日の飲酒量が多い人ほど、夢の中での味覚体験が乏しくなっていました。また、一度の飲酒量が多い、さらに飲酒を控えるようすすめられている人ほど、夢の中での嗅覚体験が乏しくなっていました。

 

<断酒前の飲酒習慣と不眠および夢想起内容の関連>

アルコール依存症疑い群のほうが、ハイリスク飲酒群より、寝つきが悪く、日中の気分や活動の低下がみられました。

 

また、アルコール依存症疑い群のほうが夢のネガティブ感情体験が多く、ポジティブ感情体験には有意差はみられませんでした。また、夢の中の感覚では視覚のみ、アルコール依存症疑い群のほうが高く、各夢のテーマの体験率には差がみられませんでした。

 

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【*参考文献】

1 久里浜医療センター「アルコール使用障害スクリーニングテスト」(https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/screening/)

 

2 高橋信雄・松田英子(2020).「アルコール依存症の自助グループ参加者の睡眠に関する調査 断酒前後の不眠と悪夢の比較」ストレスマネジメント研究、16(2),52-53.

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松田 英子

東洋大学 社会学部社会心理学科 教授

公認心理師・臨床心理士

 

夢の専門家。東洋大学社会学部社会心理学科教授。公認心理師・臨床心理士。お茶の水女子大学文教育学部卒、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科単位取得満期退学。博士(人文科学)。専門は臨床心理学、パーソナリティ心理学、健康心理学。

著書に『夢と睡眠の心理学』(風間書房)、『図解 心理学が見る見るわかる』(サンマーク出版)、『夢を読み解く心理学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『はじめての明晰夢 夢をデザインする心理学』(朝日出版社)など多数。

関心分野は、睡眠の改善から心の健康を高めること。小学生から90代まで1万人以上の夢を収集・分析しており、夢の専門家としてメディアにも多数出演している。

 

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    ※本連載は松田英子氏の著書『1万人の夢を分析した研究者が教える今すぐ眠りたくなる夢の話』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

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